(1) 社会保障制度の概要
ベトナムでは、強制加入の社会保障制度として、①疾病手当、産休手当、労災・職業病手当、退職年金、遺族給付などを保障する社会保険、②医療費を保障する健康保険、③失業時の生活保障、職業訓練を保障する失業保険という3つの制度があります。これらに加え、退職・遺族保険を別途追加する任意加入の社会保険もあります。
対象となる労働者は、ベトナム人については、無期雇用又は1か月以上の有期雇用の労働者は全て強制加入保険の対象となります。一方、外国人労働者については、ベトナムにおいて発行された労働許可証、実務証明書又は実務許可書に基づき、ベトナムでの就労期間が1年以上の労働契約を締結している外国人が強制加入の対象となります。但し、外国人労働者については、失業保険は対象外です。
各保険の料率は、次のとおりです。
① ベトナム人労働者の場合
社会保険 | 健康保険 | 失業保険 | 合計 | |
労働者負担分 | 8% | 1.50% | 1% | 10.50% |
雇用主負担分 | 17.50% | 3% | 1% | 21.50% |
合計 | 25.50% | 4.50% | 2% | 32% |
② 外国人労働者の場合
社会保険 | 健康保険 | 失業保険 | 合計 | |
労働者負担分 | 8% | 1.50% | – | 9.50% |
雇用主負担分 | 17.50% | 3% | – | 20.50% |
合計 | 25.50% | 4.50% | – | 30% |
(3) 強制加入の例外となる外国人労働者
企業内異動者(日本の親会社からベトナムの子会社へ出向している日本人駐在員の多くはこの企業内異動者に該当するかと思います。)と、ベトナムの法令に規定する定年退職年齢に達した外国人労働者は、強制加入の対象外となります。ベトナムの定年退職年齢は、男性は60歳、女性は55歳でしたが、2019年に改正された労働法により、男性については2021年から2028年まで毎年3か月ずつ、女性については2021年から2035年まで毎年4か月ずつ延長されます。2022年時点での定年退職年齢は、男性60歳6か月、女性55歳8か月です。