「日本の労働災害に関する法制度の概要」

 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)は、業務上または通勤による労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に対して保険給付を行うことを目的としています(第1条)。

  1. 労災事故

労災保険給付の対象となる事故は、事業の遂行においての事故や事業に起因する疾病です。そのため、身体的な傷害だけではなく、心理的な要因による精神障害やいわゆる「過労死」等も労働災害と判断される場合があります。

労働災害は、その傷害、疾病、傷害、死亡が生じた場面に応じて業務災害と通勤災害に分けられます。

業務災害は、事業所内での作業に起因するものにとどまらず、出張や社外業務中に遭遇した事故も含み、一般的に、労働者に発症した疾病で、①労働の場に有害因子が存在し、②健康障害を起こしうるほどの有害因子にさらされ、③発症の経過及び医学的にみて妥当である場合には、業務上疾病と認められます。

通勤災害は、就業に関し、㋐住居と就業場所の往復、㋑就業場所から他の就業場所への移動、または㋒単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動時に生じた事故を指し、合理的な経路及び方法で行った通勤であることが要件とされます(ただし、業務の性質を有する移動は、業務災害となります)。そのため、通常と異なる通勤路を使用したり、立ち寄りをしていた場合には、個別具体的な事情を考慮して、通勤災害と認められるかが判断されます。

 2. 事業者の義務

 労災事故が発生した場合、事業者は、労働基準法により賠償責任を負いますが、労災保険に加入している場合、労災保険による補償がなされます。ただし、休業1~3日目については、休業補償の対象外となるため、事業者が平均賃金の60%を直接被災労働者に支払う必要があります。

労災保険は強制加入であり、業種や規模にかかわらず、常時1人でも従業員(パートを含む)を雇用している事業者すべてに適用されます。事業者は、事業の種類により定められた割合の保険料を全額負担しなければなりません。故意または重大な過失によって労災保険の加入を懈怠していた場合には、発生した労災事故について支給された保険給付の全額または40%を徴収されることがあります。

 事業者には、労災事故が発生した際に労働基準監督署に労働者死傷病報告をする義務もあります。

      3. 労災給付

 労災事故により、負傷・疾病があったときの給付は大きく分けて、療養に関する給付と休業に関する給付があります。

 療養(補償)給付は、治療に関する費用の補償で、労災保険指定医療機関以外で療養を受けるときは被災労働者が支払った医療費が支払われます。労災指定医療機関で受診するときには療養費を支払う必要はなく、直接医療機関に給付請求書を提出することで足ります。療養の結果、後遺障害が残る場合には、その等級によって一時金または年金の形で障害(補償)等給付がされます。

 傷病の療養のために労働できず、賃金を受けていない期間について、休業4日目以降は、それに先立つ3月間の平均賃金(日額)の80%(60%が休業補償、20%が休業特別支給金)に休業した日数を乗じて給付が保証されます。療養開始後1年6月を超えても治癒せず、傷害の程度が傷病等級に該当する場合には傷病(補償)等年金が給付され、障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者で介護を要する場合には介護(補償)等給付もされます。

 被災労働者が死亡した場合には、葬祭料の他、遺族に対して遺族補償給付として年金と一時金が給付されます。年金の額は遺族の人数に応じて変動しますが、遺族補償給付は最も優先順位の高い人に対して支給されます。

 労災保険の給付には、指定の請求書に事業者及び医療機関から証明を受けて、労働基準監督署に提出する必要があります。事業者が証明を拒否した場合でも、被災労働者がその旨を告げて請求書を提出すれば、労働基準監督署が事業者に対して事実調査を行い、その結果、労災認定が下りれば、給付を受けることができます。労災認定に不服がある場合には、行政手続である審査請求をすることができます。