「ベトナムの労働災害に関する法制度の概要」

 ベトナムでは、2016年7月から労働安全衛生法が施行され、その中で労働災害についても規定されています。

(1) 適用対象

 労働安全衛生法45条には、次の要件を満たす場合を労働災害と規定しています。

 ① 以下のいずれかに該当する事故に遭うこと

  ・ 職場において勤務時間内に発生した事故

  ・ 雇用主の指示に従い、職場以外の場所又は勤務時間以外において発生した事故

  ・ 適切な時間に適切なルートで通勤している途中で発生した事故

 ② 事故により、5%以上、労働能力を喪失したこと

 ③ 事故が次のいずれかの原因により発生したものではないこと

  ・ 労働者と事故の原因となった者との間で、業務に関係なく紛争が発生した場合

  ・ 労働者が故意に健康を害した場合

  ・ 労働者が法律で禁止されている薬物などを使用した場合

(2) 労働災害が発生した場合における使用者の責任

 労働災害が起こった場合における使用者の責任については、次のとおり規定されています。

 ・ 被災者の応急処置や救急搬送を速やかに行うこと

 ・ 労働災害を所轄官庁に届け出ること

 ・ 死亡労働災害や重大な労働災害の現場をそのまま保全すること

 ・ 応急処置を含む以下の治療費を負担すること

・ 健康保険加入者の場合

   自己負担分の医療費及び健康保険適用外の医療費

   医学鑑定評議会において労働能力喪失率が5%未満とされた場合における労働能力喪失率検査の費用

・健康保険未加入者の場合

   医療費全額

 ・ 治療やリハビリのために欠勤した被災者に対し、欠勤期間の給与を全額支払うこと

 ・ 労働者本人の過失によらない労働災害の場合、次のとおり補償金を支払うこと

・ 労働能力喪失率が5%〜10%の場合 月給の1.5倍以上の金額

・ 労働能力喪失率が11%〜80%の場合 月給の1.5倍以上の金額+喪失率1%あたり月給の0.4倍の金額

・ 労働能力喪失率が81%以上の場合 月給の30倍以上の金額

・ 労働者が死亡した場合 遺族に対し月給の30倍以上の金額

 ・ 労働者本人に過失がある場合、上記過失がない場合の40%以上の金額の補償金を支払うこと

 ・ その他、労働災害調査チームの設置や調査に対する情報提供、労働災害記録の作成、保管、従業員への労働災害に関する情報の提供など