(1) 労働時間に関する規定
① 日中の労働時間
使用者は、労働者に通知することを条件に、労働者に適用する労働時間について、下記の所定労働時間の範囲内において日または週単位で自由に規則を定めることができます。
- 日単位で定める場合、1日あたり8時間、1週間あたり48時間以下
- 週単位で定める場合、1日あたり10時間、1週間あたり48時間以下
但し、1935年の国際労働機関(ILO)第47号条約に基づき、ベトナムの現行労働法は、使用者に対し、週40時間労働とすることを奨励しています。
また、以下の特別な場合には、所定労働時間が短縮されます。
- 妊娠している女性労働者が、過酷、有害、危険な業務、または非常に過酷、有害、危険な業務、または母性に悪影響を及ぼす可能性のある業務に従事する場合、賃金およびその他の手当を減額することなく、労働時間を1日あたり1時間短縮しなければなりません。この規定は、子供の出産後、生後12か月に達するまで適用されます。
- 15歳未満の労働者の所定労働時間は、1日あたり4時間、1週間あたり20時間以下とし、15歳以上18歳未満の労働者の所定労働時間は、1日あたり8時間、1週間あたり40時間以下とされています。
② 深夜労働
22:00から翌日の6:00までの労働時間を深夜労働時間と定義され、通常、この深夜労働時間は、シフト制で労働者を使用する使用者に適用されます。そのため、深夜労働時間も所定労働時間とみなされますが、最低賃金やその他の処遇(労働時間中の休憩など)は、日中の労働時間よりも優遇されます。
しかし、すべての労働者に深夜労働時間制を適用できるわけではありません。使用者は、以下の労働者を深夜労働時間に勤務させることができません。
- 高地、遠隔地、国境地域、島しょ地域に勤務する妊娠6か月目以降の女性労働者
- 高地、遠隔地、国境地域、島しょ地域以外のその他の場所で勤務する妊娠7か月目以降の女性労働者
- 生後12ヶ月未満の子を養育する女性労働者(当該女性労働者の同意がある場合を除きます)
- 15歳未満の労働者
- 15歳以上18歳未満の労働者(労働傷病兵社会省の大臣がリストアップした複数の特定職種および業務は除きます)
- 労働能力が51%以上低下した障害者、重度または極めて重度の障害者(当該労働者の同意がある場合を除きます)
③ 特殊業務を行う労働者に適用される労働時間
特殊業務には、運輸(道路、鉄道、水上、航空)、海洋での石油・ガス探査・採掘、海洋業務、芸術、放射線・原子力工学の利用、高周波の応用、情報技術、技術の研究・応用、工業デザイン、潜水業務、鉱業業務、季節的生産業務および受注商品加工業務、24時間勤務を要する業務、自然災害・火災・疫病への対応、スポーツ・フィットネス関連業務、医薬品・生物学的製剤の製造業務、ガス配給管・ガス工事の運転・保守・修理業務が含まれています。
これらの特殊業務に従事する労働者に課される労働時間に関しては、労働傷病兵社会省および特定の管轄省が決定します。ただし、労働時間の決定に際し、労働時間中の休憩に関する規定の遵守は義務とされています。
(2) 時間外労働に関する規定
法律、労働協約、または就業規則に規定されている所定労働時間以外に行われる労働を時間外労働といい、使用者は、労働者に対して時間外労働を命じる場合には、労働者の同意を得なければなりません。ただし、深夜労働時間に勤務させることが禁止されている労働者に時間外労働をさせることは禁止されています。
労働者に適用される時間外労働の上限は以下のとおりです。
i) 原則として、年間200時間までです。また、1か月あたり40時間を超えてはならず、所定労働時間と時間外労働時間の合計が1日あたり12時間を超えてはならないとされています。
ii) 以下の場合は、年間300時間までとされていますが、使用者は当局に書面で届け出ることが義務付けられています。また、i)と同様に、1か月あたり40時間を超えてはならず、所定労働時間と時間外労働時間の合計が1日あたり12時間を超えてはならないとされています。
- 繊維、衣料、履物、電気、電子製品の製造および加工、農林水産物の加工、製塩
- 発電および電力供給、電気通信、製油所操業、給水および排水
- その時点で労働市場に出回っていない高度な技能を持つ労働者を必要とする仕事
- 季節的な理由、材料や製品の入手可能性、または予期せぬ原因、悪天候、自然災害、火災、敵対行為、電力や原材料の不足、生産ラインの技術的な問題により、延期できない緊急の仕事
- その他政府の定める場合
iii) 以下の場合は、時間外労働の上限はありません。また、原則として、労働者の同意を得る必要もありません。
- 国家安全保障または国防のため、法律に定められた徴兵制度の命令を執行する場合
- 自然災害、火災、伝染病、災害の予防およびそれらからの復旧において、特定の組織または個人の生命や財産を保護するために必要な業務を遂行する場合(ただし、その業務が労働安全衛生法に規定される労働者の健康や生命を脅かす場合を除く)。