「マレーシアの労働法令における、労働者該当性の判断基準と労働者に該当する場合に適用される規制又は該当しない場合に適用されない規制」

1.概要

マレーシアでは、2022年3月に、46条からなる雇用法(The Employment Act 1955)改正案が連邦議会で可決(以下「改正雇用法」といいます。)、2023年1月1日に施行されました。これにより、雇用法の適用対象となる労働者(Employee)の範囲が拡充されています。

そこで企業としては、既存の雇用契約や従業規則が改正雇用法に準拠しているかどうかを確認することが重要です。

2.雇用法(The Employment Act 1955)の適用対象

従前、適用対象となる労働者は、賃金が一定額以下(月額RM2,000以下)の労働者及び肉体労働者等に限定されていましたが、改正雇用法施行により、同法の適用対象者は、月給にかかわらず、雇用契約に基づき役務提供を行う全ての者に拡張されることになりました。なお、当該役務提供契約が雇用契約であるか否かは別途検討する必要となります。そして、当該契約が雇用契約であるか否かは、指揮命令関係の有無や報酬体系等の実質的な要素を考慮して判断されることになります。

3.雇用法による労働者保護の内容

雇用法は、雇用契約の条件及び使用者と労働者の法律関係を規律し、残業や休暇、懲戒についての規定も含まれています。雇用法による労働者保護の内容としては、例えば、同法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、当該無効部分は、雇用法で定める基準によることになります。さらに、改正雇用法には、週の労働時間上限48時間から45時間への短縮や、月の一部のみ勤務した労働者の給与計算方法、産休の延長、既婚男性労働者に対する育児休暇の付与、フレックス制度の運用、雇用法違反に課する罰金の引き上げ等が盛り込まれました。他方、月給4,000リンギを超える労働者には、原則として残業代を支給する必要はないとされている等、労働者の属性によりその適用が除外される条項も存在します。

4.東マレーシアにおける特例

東マレーシアにおいては、前記(2)の「労働者」であっても、雇用法の適用はなく、代わりにサバ州労働令(Labour Ordinance(Sabah)Cap.67)又はサラワク州労働令(Labour Ordinance(Sarawak)Cap.76)が適用されることになります。