「バングラデシュにおける賞与に関する法規制の概要と運用の実情」

1.法規制の有無

バングラデシュには、2015年バングラデシュ労働規則(以下「労働規則」という)、2019年EPZ労働法及び2022年EPZ労働規則(以下、それぞれ「EPZ労働法」「EPZ労働規則」という)において、賞与に関する規定があります。

①法規制の内容

1.労働規則

 労働規則第111条(5)によると、1年間勤続した労働者には、年に2回のフェスティバルボーナス(festival bonus)を支給しなければならず、かかるボーナスは基本給月額を超えてはならないと規定されています。ただし、金額については、労働者側が基本給月額以上を要求してはならないと解釈されており、企業側がその金額を超えることは認められます。また、3回以上のボーナスを支給することも認められます。

 2. EPZ労働法、EPZ労働規則

EPZ労働法第53条(4)によると、雇用主または雇用主が承認した者は、無期雇用労働者に対して、暦年あたり、基本給2か月分に相当するフェスティバルボーナスを、宗教的祭りの期間に支払うと規定されています。EPZ労働規則第166条では、イスラム教徒の労働者に対して、イード・ウル・フィトル(Eid-ul-Fitr いわゆる「断食明けの祝祭日」 2024年の場合4月11日)の際に1回支払われ、イード・ウル・アズハ(Eid ul-Adha いわゆる「犠牲祭」。イード・ウル・フィトルの2,3カ月後)の際に、2回目のフェスティバルボーナスが支払われるものとしています(第166条(2))。イスラム教以外の宗教またはコミュニティの労働者は、雇用主または工場経営者に対し、宗教祝祭について書面にて通知しなければならず、それに応じて、暦年で2回の主要な宗教祝祭の際に、フェスティバルボーナスが支払われるものとされています。ただし、労働者が宗教祝祭を指定しなかった場合、第166条(2)に従って、イード・ウル・フィトルとイード・ウル・アズハの宗教祝祭に、フェスティバルボーナスが支払われることとされています(第166条(3))。各フェスティバルボーナスは、基本給の1か月分に相当するものとします(第166条(4))。

  3. 運用の実情

各フェスティバルボーナスはイスラム教の祝祭である、イード・ウル・フィトル、イード・ウル・アズハの前に支払われることが一般的です。ただし、上述の通り、労働者が別の宗教の場合で、他の宗教祝祭を指定した場合には、別日を祝祭日に指定することもできるとされておりますので、その配慮も必要となります。支払日は祝祭日の10日~15日ほど前、支払額は労働者の基本給1か月分とするのが一般的な運用です。

いわゆる日本で想定される賞与とは性質が異なり、フェスティバルボーナスは、業績や各人の功績に応じて支払われるものではなく、労働者に一律に一定額が支払われるものとして受け入れられています。