「メキシコの競業避止義務の有効性の基準」

メキシコにおいて、会社と取締役や従業員の関係における競業避止については、明示的に規定する法律はありません。

メキシコにおいては、就業および職業選択の自由はメキシコ合衆国憲法(Constitucón Política de los Eestados Unidos Mexicano)5条に保障される基本的人権と考えられていることから、競業避止義務を課すことはできないとの考えが一般的のようですが、雇用契約書や退職合意書において、退職後の競業避止義務を規定するものも見受けられるのが現状です。ただし、競業避止義務の規定には配慮が必要と考えます。当事者が合意できれば、単に抑止力として規定を設けることも考えられますが、違反時に制裁金を科す規定を設けるなど、真の意味で労働者に競業避止義務を課すような場合は、相当の対価を求められることも予想され、その支払についても検討する必要がると考えます。

なお、秘密保持の観点からは、連邦産業財産権保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)において、「営業秘密」が定義され、その漏えい等の侵害行為が行政違反や犯罪として規定されています。また、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)においては、機密事項の厳重管理が労働者の義務として規定されており、機密事項が漏えいされた場合は、使用者が責任を負うことなく当該労働者を解雇できることとされています。更に、一般商事会社法(Ley General de Sociedades Mercantiles)においては、取締役(Administradores)に対して、会社の機密事項についての守秘義務を任期中および任期終了後1年間課しています。このように法による保護が図られている観点から、競業避止義務を課すことが不当と主張される場合もあるようです。