「マレーシアにおける配転・出向・転籍に関する法規制」

1. 配転に関する規制

配転については、使用者が本来的に当該命令を発する権利を有するものとして、原則として労働者に対して有効に命令を発することができるとされています。ただし、紛争予防のためにも、労働契約書や就業規則において、配転命令に関する条項を明記することが望ましいとされています。

他方、当該配転命令について、不当な目的・理由をもってなされたことが認められる場合には、実質的には降格処分(これにより労働者が退職したような場合には、解雇処分)とみなされ、当該処分において本来的に充足すべき要件が充足しておらず無効とされることがあります。

  2. 出向・転籍に関する規制

異なる使用者の下で労働者を就労させるためには、原則として労働者の同意が必要となります。

裁判例には、グループ会社のさらに子会社への異動命令の有効性について、①労働契約上、労働者がグループ内の別会社への異動命令を承諾する旨の条項は存在しないこと、②元所属会社と当該グループ会社とが機能的・財政的な統一性を有しているとはいえないこと及び③所属会社と異動先の子会社とでは事業内容が異なっていること等の理由から、当該異動命令は無効である旨を判示しているものがあります。

当該裁判例によれば、グループ会社が所属会社との関係で機能的・財政的な統一性を有している場合又は異動先の事業内容が元所属会社と同一の場合には、当該異動命令が有効と判断される余地も残されてはいます。しかしながら、紛争防止の観点からは、雇用契約中に異動を可能にする条項を盛り込み、さらに異動の際にも改めて労働者の同意を得ることが望ましいと考えられます。