(1) 配転に関する規制
労働法上、配転を規制する明文上の法令はありません。もっとも、労働規則第19条(4)では、雇用契約書(Appointment Letter)に、所属や職種を明記しなければならない旨が規定されています。後の紛争を防止するためには、配転の可能性がある場合は、雇用契約書や就業規則内に、配転により就業場所や業務内容に変更がありうる旨を記載しておくことが望ましいです。
(2) 出向・転籍に関する規制
出向(現在の使用者との労働契約関係を維持したしたまま、他の使用者の業務に従事させること)については、労働者派遣として、労働法3A条が適用される可能性があります。他方、「派遣会社」とは、労働のための契約に基づき、労働者を供給することを事業目的として登録された会社であると定義されており(労働規則第2条(f))、「出向」は想定していないとも解されます。
なお、2013年労働法改正にて、派遣会社の政府への登録が義務付けられ(労働法第3A条(1))、派遣会社によって派遣される労働者は派遣会社の労働者として同法の規定が適用されると定められています(同条(3))。また、2022年の労働規則の改正により、派遣会社を通じて派遣される労働者の賃金は、正社員として同等の業務に従事する(派遣先の)労働者の賃金を下回ってはならず、その基本給は、派遣会社が(派遣先へ)請求する賃金額の50%を下回ってはならないと規定されました(労働規則第16条)。更に、全ての派遣会社は、「労働者社会保障基金」の名称で銀行口座を開設し、積み立てなければならないと定められています(労働規則第17条)。なお、EPZ労働法において、派遣会社に関する規定は存在しません。
転籍(現在の使用者との労働契約関係を終了させ、他の使用者との間で労働契約関係を成立させてそこでの業務に従事させること)について定めた法令はありません。しかし、異なる使用者の下で労働者を就労させるためには、雇用契約書を締結し直す必要があるため、労働者の同意が必要となり、労働者の同意なく転籍を行うことは無効と解されます。