「タイの裁判所の種類及び各裁判所が取り扱う紛争の概要」

(1) 概要

タイの裁判所には4種類あり、司法裁判所(The court of Justice)、憲法裁判所(The Constitutional Court)、行政裁判所(The Administrative Court)、軍事裁判所(The Military Court)に分けられます。このうち、通常の民事訴訟・刑事訴訟は司法裁判所で取り扱われます。

以下では、司法裁判所を念頭にタイの司法制度について概観していきます。

(2) 司法裁判所について

司法裁判所は、一般の民事・刑事事件を扱う一般裁判所と特定の専門事件を取り扱う専門裁判所の二つに分けられます。

知的財産・国際通商、労働、租税、破産、少年・家庭といった専門事件については、各専門裁判所が第一審の管轄権を有しており、第二審を専門控訴裁判所、上告審を最高裁判所がそれぞれ担当します。

① 知的財産・国際通商裁判所

知的財産・国際通商裁判所は、知的財産権および国際通商に関する民事事件・刑事事件を取り扱っています。知的財産・国際通商裁判所は、現状、バンコクに所在する中央知的財産・国際通商裁判所のみが設置されており、バンコクを含む周辺6県を管轄しています。

また、地方には未だ知的財産・国際通商裁判所が設置されていないため、上記6件以外の地域についても、地方知的財産・国際通商裁判所までは、中央知的財産・国際通商裁判所が管轄権を有するものとされています。

② 労働裁判所

労働裁判所は、雇用や労働組合に関係する事件等、労働関連の事案を取り扱っています。労働裁判所については、バンコクに所在する中央労働裁判所のほか、全国の9地域に地方労働裁判所が設置されています。

③ 租税裁判所

租税裁判所は、税金関係の事件を取り扱っています。現状、バンコクに所在する中央租税裁判所が唯一の租税裁判所であり、バンコク及び周辺5県を管轄しているほか、地方租税裁判所が設置されるまでは、前記地域以外の地域に対しても管轄権を有するものとされています。

④ 破産裁判所

破産裁判所は、破産および事業再生に関する民事事件・刑事事件を取り扱っています。現状、バンコクに所在する中央破産裁判所が唯一の破産裁判所であり、バンコクを管轄しているほか、地方破産裁判所が設置されるまでは、前記地域以外の地域に対しても管轄権を有するものとされています。

⑤ 少年・家庭裁判所

少年・家庭裁判所は、未成年者に関する刑事事件や、家庭に関する民事事件等を取り扱っています。少年・家庭裁判所はバンコクをはじめ全国各地に設置されています。