「ベトナムの裁判所の種類及び各裁判所が取り扱う紛争の概要」

⑴ 組織体制

ベトナムの司法機関は人民裁判所と呼ばれ、憲法に基づき司法権を行使します。人民裁判所には、最高人民裁判所および法律で定められたその他の裁判所が含まれます。人民裁判所組織法(2025年1月1日に施行される2024年人民裁判所組織法)第3条によると、人民裁判所の組織は以下の通りです。

最高人民裁判所:ベトナムの最高司法機関です。
高級人民裁判所:省級人民裁判所および専門第一審人民裁判所からの上訴を扱います。
省級人民裁判所(中央直轄都市人民裁判所を含みます):県級人民裁判所からの上訴および特定の第一審を扱います。省級人民裁判所は中級裁判所とみなされます。
県級人民裁判所:主に、第一審を扱います。県級人民裁判所は地方裁判所とみなされます。
専門第一審人民裁判所(2025年1月1日以降に施行):行政、知的財産、破産事件の第一審のみを扱います。
軍事裁判所(中央軍事裁判所、軍事区域および同等の軍事裁判所、地域軍事裁判所を含みます):ベトナム人民軍に組織され、被告人が現役の軍人である刑事事件およびその他規定された事件を審理する裁判所制度を指します。
(2) 紛争の種類

2015年民事訴訟法の規定に基づき、紛争は民事紛争、家庭紛争、商業・ビジネス紛争、労働紛争に分類されます。これに応じて、紛争の具体的な内容に基づき、人民裁判所の管轄レベルが決定されます。しかし、裁判所の管轄レベルを適用する前に、当事者は裁判所の管轄区域を考慮しなければなりません(2015年民事訴訟法第39条)。紛争の対象が不動産である場合、不動産が所在する地域の裁判所のみが紛争を解決する管轄権を有します。また、当事者は、書面により、原告の居住地または原告会社の本店所在地の裁判所に紛争解決を依頼することに合意する権利を有します。合意がない場合は、被告の居住地または被告会社の本店所在地の裁判所が民事事件を解決する管轄裁判所となります。