「日本の新株発行手続きの概要」

(1) 概要

日本では、株式の発行に関して、授権資本制度が採用されています。授権資本制度の下、会社は、将来発行する予定の株式の数を定款で定めておき、その「授権」の範囲内で会社が取締役会決議等により株式を発行することが認められています。

また、新株発行の方法には、第三者割当、株主割当、公募発行の3つがあります。

第三者割当とは、特定の第三者に対して株式の割り当てを行う方法をいいます。また、株主割当とは、全ての既存株主に対して各自の保有する株式数に応じて株式を割り当てる方法です。そして、公募発行とは、一般の投資家に対して広く出資を募集し、応募者に対して株式を割り当てる方法をいいます。

(2) 公開会社の場合

公開会社の場合、新株発行は取締役会の決議によって行うことができます(会社法201条1項)。ただし、払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合(有利発行)には、株主総会の特別決議によらなければなりません(会社法201条1項、199条3項、309条2項5号)。

また、既存株主に新株発行差止請求の機会を与えるために、募集事項を定めたときは、払込期日または払込期間初日の2週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければなりません(会社法201条3項)。もっとも、金融商品取引法に基づき、払込期日の2週間前までに所定の届け出をする場合は、株主に対する通知公告は不要とされます(同条5項、金融商品取引法4条)。

(3) 非公開会社の場合

非公開会社の場合、新株発行の基本的な方法は、株主割当となります。非公開会社の場合、株主は、配当による経済的利益だけでなく、会社に対する支配権を維持する観点から持ち株比率の維持にも関心を有しているのが通常であると考えられるところ、株主割当ならば、持ち株比率に変動をきたさないからです。

株主割当による発行については、株主総会決議によって行うことができるほか(会社法199条1項)、定款で取締役会決議によって行うことができる旨を定めることも可能です(会社法202条3項)。

他方、第三者割当等、既存株主の持ち株比率に影響を与える方法で新株発行を行う場合には、既存株主の保護のため、株主総会の特別決議によらなければなりません(会社法199条2項、309条2項5号)。

また、公開会社の場合と同様、有利発行の場合にも株主総会特別決議が必要となります。