(1) 規制の概要
マレーシアでは、マレーシア中央銀行(Central Bank of Malaysia)が、市場で取引される通貨、証券、その他の金融商品に関連するデリバティブ市場の秩序ある状況または完全性を規制等することを目的として、規則その他ガイドラインを発行する権限を有しています(金融サービス法140条⑴、マレーシア中央銀行法43条⑴参照)。そして、マレーシア中央銀行は、以下に述べるとおり、一定の条件のもとで海外からの借入(オフショアローン)を認めています。
(2) 居住者と非居住者の別
後述⑶以下で述べるとおり、海外からの借入については、居住者とそうでない者(非居住者)とで、取扱いを別にしています。
「居住者」とは、次に掲げるいずれかに該当する者をいいます。
(a) マレーシア国民(マレーシア国外の領域の永住権を所持し、国外に居住する者を除く)
(b) マレーシアの永住権を所持し、定住する非マレーシア国民
(c) マレーシアで設立、登録、または認可された企業(法人・非法人、本社・支店を問わない)
「非居住者」とは次のいずれかに該当する者をいいます。
(a) 居住者以外の個人
(b) 居住者である会社の海外の支店、子会社、地域事務所、営業所、駐在員事務所
(c) 大使館、領事館、高等弁務官事務所、超国家機関、国際機関、またはマレーシア国外の領域の永住権を所持し、国外に居住するマレーシア国民
(3) 居住者に対する外貨建て信用供与
(a) 居住者である個人による借入れ
居住者である個人は、1,000万リンギを上限として、非居住者から外貨建て信用供与を得ることができます。ただし、非居住者である家族からの信用供与には金額の制限はありません。
(b) 居住者である企業による借入れ
居住者である企業は、合計で1億リンギ相当額を上限として、非居住の金融機関または同一企業グループではない非居住者から、外貨建て信用供与を得ることができます。外貨建て借入れの元本および利息についても、認可額を超えない範囲で借換えが可能となっています。
(4) 居住者に対するリンギ建て信用供与
(a) 居住者である個人
居住者である個人は、マレーシア国内での使用を目的として、非居住者の企業(金融機関を除く)または個人から、100万リンギを上限とするリンギ建て信用供与を得ることができます。ただし、非居住者である家族からの信用供与について、金額の制限はありません。
(b) 居住者である企業
居住者である企業は、マレーシア国内の実需に基づく活動のために、同一企業グループ内の非居住者の他社(非居住者金融機関を除く)または非居住者の直接株主から、金額の制限なく自由にリンギ建て信用供与を得ることができます。さらに、合計で100万リンギ相当額を上限として、マレーシア国内での使用を目的として、同一企業グループ以外の非居住者企業からリンギ建て信用供与を得ることができます。