「メキシコにおける内部通報者保護制度の概要」 

⑴ 内部通報者保護の概要

メキシコでは、公的部門においては内部通報者を保護するための法制度が整備されていますが、民間部門には十分な法的枠組みが存在していません。

公的部門については、2017年7月に施行された行政責任一般法(Ley General de Responsabilidades Administrativas)が、公務員による不正行為の取り締まりを目的としており、内部通報者の保護措置を含んでいます。同法では、内部通報者の匿名性を確保し、通報の調査過程においてその身元を守ることが規定されています。また、善意で不正を報告した通報者に対する報復行為を禁止する規定も設けられています。

さらに、2019年9月には、汚職に対する内部・外部通報システムの運用と推奨に関するガイドラインが制定されました。これにより、贈収賄や公金の不正使用に関する通報を受け付けるプラットフォームの運営が確立されました。このガイドラインでは、汚職、人権侵害、ハラスメントなどの違反行為を報告する通報者の保護を目的とした施策を推進しています。2020年10月には、汚職通報者保護に関するプロトコルが策定され、通報者を保護する体制が強化されています。

⑵ 民間企業での内部通報者保護制度の構築について

 現時点では、メキシコには民間企業向けの包括的な内部通報者保護法は存在しません。しかし、企業が自主的に内部通報制度を設けることは可能であり、行政責任一般法においても、企業に対し、内部統制およびコンプライアンスプログラムの一環として、内部通報制度の導入を勧めています。内部通報制度の設置は義務ではありませんが、企業の倫理的行動を促進し、不正行為を防ぐために推奨されています。