「インドにおけるインサイダー取引規制の概要」

インサイダー取引については、1992年インド証券取引委員会法(Securities and Exchange Board of India Act,1992。以下「法」といいます。)および2015年インド証券取引委員会(インサイダー取引禁止)規則(Securities and Exchange Board of India (Prohibition of Insider Trading) Regulations, 2015 。以下「規則」といいます。)が規制しています。

 規則によると、「インサイダー」(insider)は、正当な目的、職務の遂行、または法的義務の履行を促進する場合を除き、上場会社または上場を予定している会社の「未公表価格感応情報」(unpublished price sensitive information)について、他者に対し、伝達、提供またはアクセスの提供をしたり、未公表価格感応情報を保有した上で株式の取引を行ったりすることが禁じられています(規則3条(1)、4条)。また、いかなる者であっても、正当な目的、職務の遂行、または法的義務の履行を促進する場合を除き、インサイダーから未公表価格感応情報を取得することはできません(規則3条(2))。

 同規則上「インサイダー」(insider)とは、会社の関連者(取締役や従業員等、会社とつながりがあり、未公表価格感応情報にアクセスすることが合理的に予測される者)または未公表価格感応情報を保有している者をいいます(規則2条(g))。また、「未公表価格感応情報」(unpublished price sensitive information)とは、会社またはその株式に直接的または間接的に関連する一般に公表されていない情報であり、一般に公表されると株式の価格に重大な影響を及ぼす情報をいい、財務情報、配当に関する情報、資本構成の変更、合併・買収等に関する情報等が含まれます(規則2条(n))。

(2)  罰則

 未公表価格感応情報に基づき株式の取引を行ったり、未公表価格感応情報を他者に伝達等した場合には、100万ルピー以上2億5千万ルピー以下または当該取引による利益の3倍のいずれか高い方の罰金が科せられます(法12G条)。