「バングラデシュにおける製造物責任に関する法制度の概要について」

(1) 製造物責任の枠組み

バングラデシュでは、製造物責任を独立に定める特別法は存在なく、主としてコモンローに基づく不法行為責任等に基づくものとなります。契約当事者間において生じた場合は、契約上の瑕疵担保責任が併せて問題となる場合があります。

2009年消費者保護法や2023年医薬品・化粧品法のように、特定の商品又は役務について、消費者が金銭、健康又は生命に損害を受けた場合に、製造者の責任を規定する法律があります。販売に直接起因する製造物責任の請求については、売買取引法(Sale of Goods Act, 1930)および契約法(Contract Act, 1872)が関連します。

(2) 責任主体

2009年消費者保護法では、製造者、販売者、提供者の責任を定め、行政上、刑事上の責任を負うことが定められています。

消費者にとって有害で倫理基準にも反する行為を反消費者的行為として定義しており(2条20項各号)、同行為には次のような行為が例として挙げられます。

  • 商品、医薬品、またはサービスを、関連法規で定められた定価を超える価格で販売ないし提供すること
  • 不純物が混入した商品や医薬品について、人の健康に極めて有害であり、既存の法によって禁止されている成分が含まれていることを知りながら販売ないし提供すること
  • 商品やサービスを販売する目的で虚偽の広告を流すこと
  • 合意した価格で商品やサービスの提供をしないこと
  • 当初表示した数量または重量より少ない数量または重量で販売すること
  • 商取引において計量器を操作して不正確な重量を表示すること

同法4章以下において、反消費者的行為に該当する各違法行為について、罰則が定められています。その中には、過失等により、サービスの利用者の財産、健康、生命等に損害を与える行為(同法53条)もあります。

(3) 消費者救済

 2009年消費者保護法では、同一の係争事項について既に刑事訴訟が進行しており、地方管轄権を有する地方裁判所に対し、同法に基づく適切な提訴を行える場合、民事訴訟を提起する権利が認められています。