(1) 概要
アラブ首長国連邦(UAE)では、製造物責任を独立に定める特別法は存在しません。製造物の安全や消費者保護について、製造物安全法(2018年連邦法第10号)、消費者保護法(2020年連邦法第15号)及びこれらの施行令によって規定されています。
(2) 消費者救済
消費者保護法第4条は、購入・使用した商品・役務について正しい情報を得ること、紛争について公正かつ迅速な解決を得ること、商品・役務の購入・使用の結果生じた人的物的損害に対して公正な賠償を得ること等を消費者の権利として規定しています。その上で、商品または役務の利用の結果生じた人的および物的損害について、消費者が既存の法律に従って損害賠償を請求する権利を有する旨を確認するとともに、これに反する合意は無効であることを定めています(第24条第1項)。
(3) 製造者等の責任
消費者保護法は、消費者の行為に起因しない、仕様、製造、供給上の誤りの結果、消費者に損害を与え又はその使用を妨げる、商品・役務の品質、数量、効果、外観の違い、寸法又は構成を欠くことを欠陥(defect)、製造又は提供後に消費者に損害を与え又はその使用を妨げる商品・役務に生じるものを不備(flaw)、と定義し(第1条)、フリーゾーンを含むUAE内のあらゆる商品および役務並びにそれに関連した供給者、広告主、代理店(UAEに登録するeコマース提供者を含む)の行為に対して適用され(第3条)、供給者等には、販売した商品につき特定期間のあらゆる保証を、提供した役務につきその性質に相応した期間中に欠陥・不備がないことの保証を行う義務(第10条)、欠陥・不備が発見されたときには無償で修繕、交換、返金等の救済行為をとる義務(第12条)等が課され、違反者には、2年以下の拘禁刑および1万以上200万UAEディルハム(AED)以下の罰金が課され、再犯の場合にはその2倍とする(第29条)等の罰則が定められています。
また、製造物安全法は、製品の安全性につき定義し(第1条)、フリーゾーンを含むUAE全域で流通するあらゆる物品(医薬品、芸術作品、補修等を要する中古品を除く)に適用され(第3条)、物品の製造者、代理店、輸入者、および物品の安全に責任を有する物品流通に関与する者に、それぞれの物品に適用される法令、安全に関する基準を遵守する義務(第4条)、安全でない物品の国内流入を阻止し、物品が通常の使用において安全であることを保証し、安全でないことが発見された際には予防・是正措置を行う義務(第6条)等を課し、安全性を欠く物品を流通させた場合等には拘禁刑または50万以上300万AED以下の罰金とする(第8条)等の罰則を定めています。






