(1) 取締役の基本的義務
タイでは、民商法典(Civil and Commercial Code:以下「CCC」といいう)により、取締役の義務および責任が規定されています。CCC第1167条以下において、取締役、会社および第三者との関係、ならびに取締役の義務内容が定められています。
CCC第1167条により、取締役、会社および第三者との関係について、代理人の規定を適用すると定められています。すなわち、取締役または代表者がその権限の範囲内で行った行為は、第三者に対して、会社を法的に拘束することとなります。また、取締役の主な義務は、以下のとおりとなります。
- 善管注意義務
取締役は、定款に従い、株主総会の監督の下で会社の業務を管理し、善良な管理者として期待される注意義務をもって職務を遂行しなければなりません(CCC第1168条第1項)。
- 競業避止義務
取締役は、株主の承認がない限り、会社と競合する事業を行ってはなりません(CCC第1168条第3項)。
- 法定管理義務
取締役は、適正な帳簿および会計記録を備え付けること、財務諸表を作成し株主総会の承認に付すこと、ならびに引受済株式の全額が株主により払い込まれていることを確保する義務を負います(CCC第1168条第2項)。
(2) 取締役が会社に対して損害賠償義務を負う場合
取締役は、以下のような場合に、会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
- 義務違反による損害発生
取締役が、定款違反、株主総会決議違反、法令違反、会社に対する契約上の義務違反、または経営における過失もしくは不正行為を行い、その結果、会社に損害が生じた場合には、当該損害について責任を負う可能性があります。
- 権限外行為による責任
取締役が権限を有しない行為、または権限の範囲を超えた行為を行った場合、当該行為は会社を法的に拘束せず、取締役が個人的に責任を負う可能性があります。
(3) 取締役責任の追及方法
取締役責任の追及方法としては、主に以下の方法が認められています。
- 会社による直接訴訟
取締役の違法または不当な行為もしくは不作為により会社に損害が生じた場合、会社は、他の取締役を通じて、当該取締役に対し損害賠償請求訴訟を提起することができます(CCC第1169条第1項)。
- 株主代表訴訟
会社が取締役に対する訴訟提起を行わない場合、株主は、会社に代わって取締役の責任を追及する株主代表訴訟を提起することができます(CCC第1169条第1項)。
ただし、株主は、事前に会社に対して訴訟提起を求める書面による請求を行う必要があり、会社が合理的期間内に応答しない場合、または訴訟提起を拒否した場合に限り、訴訟を提起することができます。なお、訴訟により認容された損害賠償金は、株主個人ではなく、会社に帰属します。
- 債権者による責任追及
会社の債務が未履行である場合には、債権者は、その未払債権額を限度として、取締役に対し直接損害賠償を請求することができます(CCC第1169条第2項)。
- 解散後の責任追及
会社が解散した後は、取締役に対する責任追及は、株主ではなく、指名された清算人のみが行う権限を有します。






