マレーシアのトピック、最新の法令等の紹介

⑴ 従業員社会保障法の改正法案

2025年10月30日に、従業員社会保障〈改正〉法案2025(Employees’ Social Security (Amendment) Bill 2025、以下「改正法案」という)が下院に提出されました。改正案は新たな社会保障制度である非就労傷害制度(Non-Employment Accident Injury Scheme)を導入することを主たる目的としています。

⑵ 改正法案のポイント

① 非就労傷害制度(Non-Employment Accident Injury Scheme)の導入

「非就労傷害(non-employment injury)」とは、業務中または業務に起因して生じたものでない事故によって従業員に生じた人身傷害のことをいいます。ただし、他の社会制度(2017年自営業者社会保障法、2022年主婦社会保障法)の適用がある場合、または、当該傷害が疾病により引き起こされたものである場合にはこれに該当しないものとされています(改正法案2条(a)、96条B)。

② 給付対象外事由の明確化

 改正法案により、給付対象外事由が明確化されました(改正法案13条)。具体的には、マレーシア国外で発生した事故により生じた非就労傷害、給付を得るために虚偽の報告を行った場合、外国人労働者が移民総局長により発行された通行証もしくは許可証を不正利用した場合などがあげられています。

③ 拠出制度の変更

改正後の拠出制度では、新たにフェーズ制が導入され、拠出額は賃金水準に応じた区分と各フェーズとを組み合わせて算出される仕組みに変更されます。

フェーズ制とは、被保険者の賃金が支払われる期間の長さに応じて拠出額の基準を三段階に区分するものであり、フェーズごとに賃金水準に応じた拠出額区分が適用され、最終的な拠出額が決定される構造となっています。負担すべき拠出額は、賃金水準およびフェーズの段階が高くなるにつれて増加するように規定されています。具体的な負担額については、改正法案第三附則(Third Schedule)が細かく規定しています。なお、各段階の具体的な適用期間については改正法案で明確にされていません。担当大臣による通達等により、今後具体化されるものと考えられます。

④ 二重給付の禁止

同一期間における同一の傷害や死亡に対して複数の給付を重複して受給することが禁止されます。ただし、複数の受給資格がある場合には、従業員に選択権が与えられ、その決定が最終のものとされます(改正法案15条[96条改正]、16条[96条C新設])。