(1) 連邦産業財産権保護法改正の概要
2026年4月3日、メキシコの連邦産業財産権保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)の改正が官報で公示され、翌4日に施行されました。今回の改正は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)との整合性も踏まえ、特許及びその他の登録手続の簡素化・効率化、各種手続における処理期間の短縮、技術移転の促進、並びに人工知能(AI)を用いた侵害行為に対する制裁措置等を内容とするものです。
(2) 主な改正内容
今回の改正では、まず特許制度において仮出願制度が新設されました。これにより、発明者名及び発明を特定するための明細書のみで出願日を確保することができ、仮出願が受理された日が特許出願日として認められます。この場合、出願人は仮出願の受理日から12か月以内に正式出願を行う必要があり、完全な特許出願が行われない場合には、却下されたものとみなされます。なお、仮特許出願は、公開又は審査の対象とはされません。
また、審査の迅速化を目的として、実体審査開始から原則として1年以内に最終判断を行う法定期限が導入されました。法定期限内に最終決定がなされない場合、出願人は、新設される専門技術委員会に対して決議の発出を求める手続を申し立てることができます。加えて、手続上の権利喪失を回避するため、優先権回復制度、手続上の権利回復制度、及び優先権書類の補完制度が導入されました。さらに、医薬品分野では、特許期間延長制度が設けられました。これは、医薬品の衛生登録の付与における不合理な遅延により生じる実質的な特許期間の短縮を補償する制度であり、期間は最長5年とされています。
商標制度については、保護対象が拡張されました。従来の文字や図形に加え、位置商標、動き商標、マルチメディア商標、及びこれらの標識の組合せが明文化されています。他方で、商標登録できない標章として、製品又はサービスの技術名又は一般名、それらを表す慣用名又は一般名称となっている語句、名称、句、比喩的要素、識別力を欠く語句、名称、句、音又は比喩的要素、並びに先住民族及びアフリカ系メキシコ人・コミュニティの団体知的財産を構成する要素と同一又は紛らわしいほど類似する商標等が追加されました。また、商標に関する審査期間の明確化も行われ、商標登録の可否については原則5か月以内、更新手続については3か月以内に処理されることが規定されています。
技術移転に関しては、本法の適用範囲が改正され、技術移転の促進及び育成が目的の一つとして明示されました。あわせて、メキシコ産業財産権庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial:IMPI)の権限も拡大され、ライセンス、譲渡、権利移転その他の技術移転契約締結のための手段に関する法的助言の提供、イノベーション、産業財産権の保護及び技術移転を支援するプログラムの設計・推進等が含められています。
侵害行為に関しては、人工知能(AI)による違反行為も行政制裁の対象となることが明示されました。また、特徴的な標識と大規模イベントとの間に、公式スポンサーシップがあるかのような虚偽の印象を与えるアンブッシュマーケティングについても、侵害行為として行政制裁の対象となることが明確化されました。






