ベトナムのトピック、最新の法令等の紹介

ベトナムの現行労働法上、労働契約は、原則として、使用者と労働者との間で書面により締結する必要があります。ここでいう「書面」とは、物理形式又は電子形式のいずれによっても作成することが可能です。ただし、電子形式による場合は、電子取引に関する法令上の要件も満たす必要があります。

以下では、電子労働契約を締結する際に考慮すべき主要な法的及び実務的事項を紹介します。

(1) 労働法令上の基本要件

電子労働契約は、物理的な書面形式で締結される労働契約と同様に、ベトナムの労働法令に基づき労働契約に適用されるすべての法定要件を満たさなければなりません。

(2) 電子労働契約の有効要件

電子労働契約が法的に有効となるためには、さらに、以下の要件を満たす必要があります。

  • 関連法令の遵守

電子取引、サイバー情報セキュリティ、データ、個人情報保護及び文書保存に関する現行法令その他の関連規定に従い、労働契約を締結すること。

  • VNeID、デジタル署名及びタイムスタンプの利用

レベル2のVNeIDアカウントを保有し、有効なデジタル署名及びタイムスタンプサービスを利用し、政令第337/2025/ND-CP号に規定されるその他の技術的及び法的要件を満たす方法により、労働契約を締結すること。

なお、VNeIDとは、Vietnam Electronic Identification(ベトナム電子識別)を意味し、ベトナム公安省傘下の国家人口データセンターによって開発されたモバイルアプリケーションです。VNeIDは、人口、電子識別及び電子認証に関するベトナムの国家データベースを基盤として構築されたデジタル識別プラットフォームであり、従来の物理的な身分証明書に代わる電子的な本人確認手段として利用されます。ベトナム国民、ベトナム法に基づき適法に設立された組織(企業その他の組織を含みます。)及び法定要件を満たすベトナム居住外国人は、それぞれに対応するVNeIDアカウントを取得することができます。

  • 電子労働契約の効力発生時点

契約当事者間に別段の合意がない限り、電子労働契約は、最後の契約当事者がデジタル署名を付した時点で効力を生じます。ただし、すべての契約当事者のデジタル署名にタイムスタンプが適切に付され、データメッセージが認可を受けた電子契約サービス提供者によって認証され、かつ、当該認証が電子労働契約に組み込まれていることを条件とします。

  • 電子労働契約のプラットフォームへの送信及び識別コードの取得

適切に締結され、認証された電子労働契約を、認可を受けた電子契約サービス提供者を通じて、ベトナム内務省が管理する電子労働契約プラットフォーム(https://hopdonglaodong.moha.gov.vn/landing-page/)へ送信し、当該電子労働契約に係る識別コードを取得すること。

なお、電子労働契約プラットフォームは、電子労働契約に関するデータを一元的に管理するシステムであり、電子労働契約の検索、検証及び認証を容易にする機能を有します。

(3) 契約当事者への送付

電子労働契約は、当事者間で合意した電子的方法により、データメッセージの形式で、労働者及び使用者の双方に送付されなければなりません。

(4) 電子労働契約の保存 適法に締結された電子労働契約は、その終了日から少なくとも10年間保存する必要があります。使用者と労働者が複数の電子労働契約を連続して締結した場合、当該10年間の保存期間は、最後の労働契約の終了日から起算されます。