(1)タイの個人情報保護法に違反した場合の刑事罰について
タイの個人情報保護法(以下「PDPA」といいます。)は、違反時のペナルティが多様です。「行政罰」「刑事罰」「懲罰的損害賠償制度」が定められていますが、場合によっては多層的に責任を負う場合があります。このうち、「刑事罰」についてはPDPAの第79条から第81条にかけて規定されており、今回は、第81条についてご紹介します。
(2)第81条の構成要件と実務上の意味
ア PDPA第81条は、法人がPDPA上の違反行為を行った場合において、①当該違反行為が取締役、マネージャー又はその行為につき履行責任を負うべき者の指示もしくは行為に起因するとき、または、②これらの者が指示もしくは是正の義務を負いながらこれを怠ったために当該法人が違反行為を行ったときは、当該個人も、当該違反行為について定められた刑罰と同一の刑に処せられる旨を定めています。作為(指示・関与)だけでなく、不作為(監督義務の懈怠)のみでも役員個人が処罰対象となりうる点が特徴といえるいでしょう。そして、科される刑の重さは、法人が実際に違反した条文によって定まることになると解されます。
イ 日本の個人情報保護法と比較すると、日本法は、違反行為を行った従業員等の行為者本人を処罰した上で、その所属法人にも別途罰金刑を科す構造になっており、日本法とタイ法とは構造が異なっていることが分かります。
ウ これらをふまえると、実務上は、タイ現地法人に出向・駐在する日本人役員個人が、法人の違反行為について直接に刑事責任を問われるリスクがある点に留意が必要であるといえるでしょう。指示・是正の実施状況を記録に残すこと、報告ラインを明確にすることなど、平時からの体制整備が重要と考えられます。






