前号に引き続き、2026年改正倒産・破産法典(Insolvency and Bankruptcy Code (Amendment) Act, 2026、以下「本改正法」といいます)について解説いたします。なお、2016年に制定された倒産・破産法(以下「IBC」といいます)は廃止されず、引き続き効力を有します。
⑺ 解決計画に関する改正
(a) 解決計画に反対した金融債権者に対する支払保護基準の変更
解決計画に反対した金融債権者に対する支払保護基準が改定され、以下の①・②のうちいずれか低い方の金額を下回らない金額を支払わなければならないこととされました(本改正法18条(IBC30条(2)(ba)〔新設〕))。
①清算(IBC53条)により当該債権者が受領する金額
② 解決計画に基づく分配が同条(1)の優先順位に従って行われた場合に当該債権者が受
領したであろう金額
ただし、この基準は、本改正法の施行前にすでに債権者委員会が解決計画を承認した事案、清算命令が発せられた事案、または清算への移行が承認された事案には遡及適用されません(本改正法18条(IBC30条(2)Explanation II〔新設〕))。
(b) 二段階承認制度の導入
債権者委員会の議決権の66%以上の承認を条件として、裁定機関がまず解決計画の実施を承認し、その実施承認日から30日以内に、当該計画に定められた分配方法を別途承認するという二段階承認制度が新たに導入されました(本改正法19条(IBC31条(1)第2但書〔新設〕))。
(c) 「クリーン・スレート」原則の明文化
解決計画に別段の定めがない限り、解決計画の承認前に生じた企業債務者またはその資産に対する請求は消滅し、当該請求に基づく手続は継続または新たに提起することができない、といういわゆる「クリーン・スレート」原則が明文化されました(本改正法19条(IBC31条(6)〔新設〕))。ただし、これはプロモーター、経営に携わる者、保証人または連帯責任を負う者には影響を及ぼさない旨が明記されています(本改正法19条(IBC31条(6)Explanation I〔新設〕))。
(d) モラトリアムまたは解決計画違反の非刑事罰化
モラトリアムおよび承認された解決計画の違反が非刑事罰となりました。これにより、これらの違反は刑事責任を生じさせず、金銭的制裁という民事上の効果のみを受けることとなります。
⑻ 清算手続における柔軟性の拡大
(a) 企業倒産処理手続(CIRP)への復帰
債権者委員会が解決計画を提出できなかった場合、またはCIRP期間が満了した場合であっても、裁定機関は、債権者委員会の議決権の66%以上の賛成による申立てにより、最大120日間、手続をCIRPに復帰させることができます。ただし、かかる復帰が認められるのは一度限りです(本改正法20条(IBC33条(1A)、(1B)〔新設〕))。
(b) 清算によらない解散
債権者委員会が、清算に代えて解散を選択することを認める制度が導入されました。裁定機関は、残余資産の処分方法を決定した上で、解散命令を発することができます(本改正法20条(IBC33条(2A)〔新設〕)、本改正法33条(IBC54条(2A)、(2B)〔新設〕))。
(c) 清算人の交代
清算人については、従来は裁定機関による選任のみが認められていましたが、債権者委員会が議決権の66%以上の議決により、別の倒産専門家に交代させることが可能となりました(本改正法22条(IBC34A条〔新設〕))。
(d) 担保権実行を求める担保付債権者の期限
担保権を実行しようとする担保付債権者は、清算開始日から14日以内にその旨を清算人に通知しなければならず、これを怠った場合、当該担保権は清算財団に放棄されたものとみなされます。さらに、同一資産について複数の担保付債権者が権利を有する場合、債権額の66%以上を代表する担保付債権者の同意がない限り、実行は認められません(本改正法31条(IBC52条(2)〔改正〕))。
⑼ 債権者主導型倒産処理手続(Creditor-Initiated Insolvency Resolution Process)の導入
債権者主導型倒産処理手続(CIIRP)が新たに導入されました。これは、未払金融債務の51%以上を保有する届出済みの金融債権者が、企業債務者に意見陳述のための30日間の猶予を与えた後、倒産手続を開始することを認めるものです。金融債権者は、企業債務者からの回答を踏まえた上で、その回答から30日以内に届出済み債権者クラスの51%の承認を得て、解決専門家を選任することができます(本改正法40条(IBC58A条~58K条〔新設〕))。
⑽ グループ倒産
中央政府が、既に倒産手続が開始されている同一企業グループに属する2以上の企業債務者について、その解決のための包括的な仕組みを定めることを可能にする、グループ倒産に関する授権的枠組みが導入されました。この枠組みは、相互に関連する企業構造が関わる事案において統合的な倒産処理アプローチを促進し、価値の毀損を軽減するとともに、断片化された事業体ごとの個別手続に伴う非効率性に対処することを企図しています。
運用の詳細は規則により中央政府が定めることとされていますが、本改正法は、裁定機関の共通ベンチの構成、並行する倒産手続の調整、共通の解決専門家の選任、および必要に応じた共通の債権者委員会の構成といった措置を想定しています。グループ倒産の枠組みは、倒産手続に付されている企業債務者にのみ適用され、支払能力のあるグループ企業には及びません(本改正法42条(IBC59A条〔新設〕))。
⑾ クロスボーダー倒産
本改正法は、インド国外で登録された企業に関連する債務者の区分について、倒産手続の承認、救済の付与、司法協力、支援および調整を含む、国境を越える倒産手続の運用および実施に関する規則を中央政府が定めることを規定しています。これには、国境を越える倒産事案を扱うための特別な審理体制の指定が含まれます。規則の内容は今後定められる予定です(本改正法71条(IBC240C条〔新設〕))。






