第1.ミャンマーにおける問題社員への対応と雇用終了時の留意点
ミャンマーで事業を運営する日系企業にとって、無断欠勤、業務命令違反、勤務態度不良、業務成績不良などの問題を抱える従業員への対応は、人事労務管理上の重要な課題です。対応を誤ると、労使紛争や解雇の有効性をめぐる争いに発展するおそれがあるため、問題が発生した段階から適切な手順を踏むことが重要です。
1.問題行為の記録と事実確認
問題社員への対応では、まず、問題となる行為の日時、具体的な内容、会社への影響などを記録し、客観的な証拠を確保することが重要です。例えば、無断欠勤であれば勤怠記録や本人への連絡履歴、業務命令違反であれば指示内容や本人の対応状況を保存します。
また、上司や同僚の報告だけで判断せず、本人から事情を聴取し、正当な理由の有無を確認することが望まれます。業務成績不良の場合には、求められる業務水準や具体的な未達事項を明確にし、本人に改善の機会を与えた記録を残すことも有益です。
2.警告と段階的な懲戒対応
ミャンマーの標準雇用契約書の規定・運用上、通常の違反行為については、原則として段階的な警告手続が重要となります。一般的には、最初の違反に対する口頭警告、2回目の書面警告、3回目の誓約書への署名という段階を経て、その後12か月以内に違反が繰り返された場合に、退職手当を支払わずに解雇できる可能性があります。ただし、実際の手続や警告の形式については、適用される雇用契約書の内容を確認する必要があります。
したがって、問題行為があったからといって、直ちに解雇することは避けるべきです。警告書には、違反行為の内容、改善すべき事項、再発した場合の措置などを具体的に記載し、本人への交付や受領確認の記録を残すことが望まれます。
3.重大な違反行為と即時解雇
横領、重大な不正行為その他の重大な違反行為(grave misconduct)については、通常の違反行為とは異なり、即時解雇が認められる場合があります。ただし、会社が重大な違反行為に該当すると判断しただけで、当然に即時解雇が適法となるわけではありません。適用される雇用契約書上の規定、違反行為の具体的内容、証拠の有無などを慎重に確認する必要があります。
特に、調査が不十分なまま解雇を通知した場合や、会社の主張を裏付ける証拠が不足している場合には、後日の紛争で会社側に不利となるおそれがあります。重大な違反行為が疑われる場合には、関係資料を保全した上で、本人への事情聴取を含む適切な調査を実施することが重要です。
4.解雇通知と退職手当の確認
通常の違反行為に関する段階的な警告手続を経ていない場合や、業務成績不良など、懲戒解雇とは異なる理由で雇用を終了する場合には、解雇予告期間や退職手当の支払いが問題となります。一般に、会社都合による雇用終了では、適用される法令・雇用契約書に従い、原則1か月前の通知および所定の退職手当の支払いが必要となる場合があります。
また、解雇に際しては、理由を記載した書面を作成し、権限のある者が署名した通知を交付するとともに、未払賃金、未消化の年次有給休暇その他の精算項目を確認することが重要です。 さらに、紛争の蒸し返しや秘密情報の漏えい防止の観点から退職合意書に必要な事項を盛り込んで署名を得ることも重要です。






