【タイの独占禁止法(競争法)の概要 】

タイでは、1999年に取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2542)が施行され、その後、2017年に改正がなされています(Trade Competition Act B.E. 2560)。取引競争法は、(1)支配的地位の濫用、(2)企業結合、(3)競争制限的行為、(4)不公正な取引方法を規制しています。概要は以下のとおりです。

  1. 支配的地位の濫用

「支配的地位を有する事業者」とは、以下のいずれかの条件に当てはまる事業者をいいます。

  1. 市場における50%以上のシェア率を有し、前事業年度の売上額が10億バーツ以上の事業者
  2. 市場シェア上位3社の内の1社であり、上位3社の前事業年度の市場シェア率合計が75%以上であり、当該各事業者の前事業年度の売上額が10億バーツ以上であること

上記条件に当てはまる事業者は、市場における支配的地位を以下の方法で行使することはできません。

  1. 商品やサービスの仕入れ価格や販売価格を不当に固定または維持すること
  2. 取引先である他の事業者に対して不当な条件を課すことにより、サービス、生産、物品の購入・販売を制限したり、物品の購入・販売、サービスの受領・提供、他の事業者に債権を求める機会を制限したりすること
  3. 正当な理由なく、サービスの提供、生産、販売、配送、輸入を停止、削減、制限したり、市場の需要よりも数量を減らす目的で商品を破壊したり、毀損させたりすること
  4. 正当な理由なく、他人の事業活動に介入すること
  5. 企業結合
    1. 取引競争委員会の通知に定められた基準に基づき、市場における競争を実質的に減少させる可能性のある企業結合を行う事業者は、当該企業結合の日から7日以内に、その結果を取引競争委員会に通知しなければなりません(事後届出)。
    2. 市場において独占を引き起こし、又は結果として支配的な地位を得る可能性のある企業結合を行おうとする事業者は、取引競争委員会の許可を得なければなりません(事前届出)。

ここでの「企業結合」には、以下のものが含まれます。

  1. 合併
  2. 他の事業者の方針、事業運営、方向性、経営を支配するために、他の事業者の資産の全部または一部を取得すること
  3. 他の事業者の政策、経営管理、指揮、管理を統制するために、直接的または間接的に、他の事業者の株式の全部または一部を取得すること
  4. 競争制限的行為
    1. 同一市場で競合する事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
      1. 商品やサービスの価格に影響を与える仕入れ価格や販売価格、取引条件を、直接的にも間接的にも固定すること
      2. 各事業者が生産、購入、販売、提供する商品やサービスの量を制限すること
      3. 競売や入札で一方が勝つために、故意に合意や条件を設定すること
      4. 各事業者が商品やサービスを販売したり、購入したりする地域を割り当てたり、購入者や販売者を割り当てたりすること
    2. 事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
      1. 同一市場の競争相手ではない事業者間で、(3)1(a), (b), (d) に規定する条件を設定すること
      2. 商品またはサービスの品質を、以前に生産、販売、または提供されたものよりも低い状態にすること
      3. 同一の商品を独占的に販売したり、同一サービスを提供したり、同一種類の商品を独占的に販売する者を指名したり、委託したりすること
      4. 合意された内容に従うように、商品やサービスの購入や生産に関する条件や行為を設定すること
      5. 取引委員会の通知に定められたその他の方法で共同契約を結ぶこと
  5. 不公正な取引方法

事業者は、次のいずれかの方法により、他の事業者に損害を与える行為をしてはなりません。

  1. 他の事業者の事業活動を不当に阻害すること
  2. 優良な市場原理や交渉力を不当に利用すること。
  3. 不当に取引条件を設定し、他者の事業活動を制限または阻止すること
  4. その他、取引委員会の通知に定める行為を行うこと
  5. 罰則

  取引委員会は、当該行為が違反行為であると信じるに足る証拠を有する場合、当該事業者に対し、当該行為の停止、中止、または修正もしくは変更を命令する権限を有します。また、違反類型毎に、刑事罰、行政罰が規定されています。