バングラデシュでは、バングラデシュ競争委員会(Bangladesh Competition Commission (BCC))が設立された後、競争法(Competition Act)が2012年に施行されました。
(1) 競争法の規制の概要
1 反競争的合意の禁止
直接的又は間接的に、市場における競争に悪影響を及ぼす、もしくは及ぼすおそれがある、又は、市場において独占若しくは寡占を引き起こす商品・役務の生産、供給、流通、保管又は取得に関する合意又は共謀をしてはならないと規定されています(第15条第1項)。ただし、以下を制限しません(同条第4項)。
- 知的財産法に基づいて付与された知的財産権の侵害を制限する又は保護するために、合理的な条件を課すための権利、及び
- 契約がもっぱら商品の生産、供給、流通若しくは管理、又は、輸出のためのサービスの提供に関連する範囲で、バングラデシュから商品を輸出するための権利
合意や,同一の若しくは類似した商品の取引又は役務の提供に従事する者又は団体の商慣行又は決定が以下に該当する場合には、市場における競争に悪影響を及ぼすとみなされます(同条第2項)。
- 直接的又は間接的に、正常ではない購入価格又は販売価格の決定をする場合、又は、入札談合を含む不正な価格を決定する場合
- 生産、供給、市場、技術開発、投資又は役務の提供を制限又は操作する場合
- 商品・役務の種類、原産地又は役務の提供元、市場の地理的領域,市場の顧客数又はその他類似の基準に基づいて市場を分割する場合
以下の取決め及び合意が競争に悪影響を及ぼす場合には,反競争的合意とみなされます(同条第3項)。
- 抱き合わせ販売 (同項(a))
商品の購入者に、購入の条件として、他の商品を購入すること、又は、販売者、他者若しくは関係する事業者から利益を得ることを要求する契約又は約束すること
2. 排他的供給契約 (同項(b))
取引の過程で購入者が販売者の商品以外の商品を取得すること又はその他の方法で取引することを何らかの方法で制限する契約
3. 排他的販売契約 (同項(c))
商品の産出若しくは供給を制限、制約若しくは保留すること、又は、商品の処分若しくは販売のために地域若しくは市場を割り当てる契約
4. 取引拒絶 (同項(d))
商品の販売者、購入者又はそれらの集団を何らかの方法で制約する契約
5. 再販売価格維持 (同項(e))
販売者が規定する価格よりも低い価格が設定される場合があることが明確に述べられていない限り、購入者が再販売時に設定する価格を販売者が規定する価格とする条件で商品を販売する契約
2 支配的地位の濫用の禁止
事業者はその支配的地位を濫用してはならないと規定されています(第16条第1項)。「支配的地位」とは,関連市場で事業者が有する強固な立場を意味し、(a) 関連市場において有力な競争圧力から独立して事業を展開すること、(b) 競争事業者、消費者又は関連市場に対し、自社に有利な影響を及ぼすことと定義されています。
以下に該当する場合は、支配的地位の濫用とみなされます(第16条第2項)。
- 商品・役務の購入・販売において、直接的又は間接的に、不公正若しくは差別的な条件を課す場合又は差別的な価格若しくは略奪的な価格を課す場合 (同項(a))。なお、「略奪的な価格」は、競争を排除することを目的として、商品の販売又は役務の提供を原価より安価で提供することと定義されています。
- 商品の生産、役務の提供、関連市場、又は、商品・役務に関連する技術的・科学的な開発を制限又は制約し、消費者の利益を損なう場合 (同項(b))
- 他者が市場にアクセスできないようにする又はし続ける場合 (同項(c))
- 本来的又は商業的利用により契約の主題とは関係のない追加的義務を他の当事者が受け入れることを条件として、契約を締結する場合 (同項(d))、又は
- ある関連市場での支配的な地位を利用して、他の関連市場に参入又は他の関連市場を保護する場合 (同項(e))
3 企業結合規制
商品又は役務市場における競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれのある企業結合は禁止されています。ただし、委員会は、審査実施後の申請に基づき,競争に悪影響を及ぼさない又は及ぼすおそれがない企業結合を承認することができ、企業結合審査規則にて、委員会の承認が必要とされる企業結合の要因が規定されます(第21条第1項)。他方で,委員会がいかなる企業結合も競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれがあると認めれば,委員会は当該企業結合を承認してはならないと定められています(同条第2項)。
(2) 罰則
委員会は、必要に応じて調査を行い、反競争的合意又は支配的地位の濫用を認める場合、それらをやめることを命令すること、及び/又は行政制裁金を課すことができます(第20条)。委員会の命令により不利益を受けた者は、不服申立てにより、再調査又は上訴を求めることができます(第29条)。