(1) 適用法令
憲法(Malaysian Federal Constitution)上、不動産に関する事項については州政府の管轄下に置かれ、不動産法制の統一性を確保するため、連邦法が定められています。具体的には、国家土地法(National Land Code 1965)、区分所有権法(Strata Titles Act 1985)、土地取得法(Land Acquisition Act 1960)等があります。ただし、東マレーシアを構成するサバ州とサラワク州については連邦法である国家土地法等は適用されず、独自の州法が適用されます。
(2) 外資規制
国家土地法及び首相府傘下の経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)発行によるガイドラインにより規制されています。国家土地法により、全ての外国会社及び非マレーシア市民は、不動産取得に際して、事前に州当局への承認を取得しなければなりません。またEPUのガイドラインにより規定された類型に該当する場合にはEPUの承認も必要となります。
(3) 所有権
土地の所有権は州政府に帰属し、私人の土地に関する権利は州政府から譲渡を受けることにより生じ、取引の対象となります。譲渡の形態としては、99年を超えない期間に限り譲渡を行なうリースホールド(Leasehold)及び永久的に譲渡を行なうフリーホールド(Freehold)とがあります。いずれの場合も土地に対する排他的支配権を取得することとなります。
土地の譲渡に際しては、通常、地代(土地の固定資産税に相当)の支払、利用形態の制限といった条件や制限が課されます。リースホールドの形態により譲渡された土地は、期間の延長がされない限り、期間満了時に州政府に復帰することとなります。
土地には、一般に、農業用地、工業用地、商業用地、住宅用地と使用目的が設定され、権利簿に記載されており、一定の場合に使用目的を変更することは可能です。
また、建物は土地の一部を構成すると考えられていることから、原則として独立した売買取引・登記の対象とはなりません。
(4) 区分所有制度
区分所有権法による区分所有(Strata Title)制度が存在します。同法により、1つの土地上の2階以上の建物は複数の区分に分譲することが可能となります。この区分所有制度により、個々のユニット(コンドミニアムの各部屋)に区分所有権が認められます。
区分所有権法によれば、コンドミニアムの個々のユニットは購入者に所有権が認められ、このユニットの所有権をStrata Titleといいます。そして、ユニット所有者は、Strata Titleにより自身の所有権を証明することができます。Strata Titleは土地所有者/開発者が土地事務所に対して、分譲(Subdivision)の申請を行い、承認されれば発行されます。
もっとも、マレーシアでは実務上、土地所有者/開発者の分譲申請手続の遅れ、又は土地事務所の発行手続の遅れを理由にユニット購入者へのStrata Titleが未発行であることは少なくありません。Strata Titleが発行されていない場合、登記簿上では開発者又は土地所有者がコンドミニアム全体について所有権を有しており、ユニット所有者には登記簿上の所有権は認められません。改正区分所有権法では、このようなユニット所有者の権利が不安定な状況を改善するため分譲申請手続の期間を短縮する等の改正が行われました。