【タイのフランチャイズによってビジネス展開を試みる場合の注意すべき規制 】

(1) フランチャイズガイドライン

タイでは、フランチャイズ事業における不公正な取引方法の検討に関するガイドライン(The Trade Competition Commission Notice on Guidelines for the Assessment of Unfair Trade Practices in Franchising B.E. 2562 (2019))が2020年2月4日に発効されています。本ガイドラインは、フランチャイズを許諾するフランチャイザーが、フランチャイズ加盟者(フランチャイジー)に損害を与える可能性のある、過度に制限的で不公正な契約条件が採用されることを防ぐことを目的としています。本ガイドラインは、取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2560)に基づき設置されている取引競争委員会により発効されています。

(2) フランチャイザーの義務

 本ガイドラインは、フランチャイザーに以下の2つの主な義務を課しています。

  1. フランチャイズに関する重要情報の開示義務(本ガイドライン第3条)

フランチャイズ契約を締結する前に、フランチャイザーはフランチャイジーに対して、フランチャイズ・システムの性質及び運営に関する重要な関連情報を開示しなければなりません。

例えば、(a)フランチャイズ事業の運営に関連するロイヤリティおよびその他の費用、(b)フランチャイズの事業計画、(c)関連する知的財産権、(d)フランチャイズ契約の更新および終了に関する事項などです。

    2. 近隣のフランチャイジーへの通知および優先権の提供義務(同第4条)

フランチャイザーが、フランチャイジーの営業地域の近隣に新たな店舗を開設しようとする場合、フランチャイザーはまず、その近隣地域のフランチャイジーに新店舗開設に関して通知を行い、当該店舗の経営権を優先的に提案することが求められます。

(3) 不公正取引に関するガイドライン(同第5条)

また、本ガイドラインでは、取引競争法第57条の不公正取引に該当するかどうかの評価に関するガイドラインとして、フランチャイザーがフランチャイジーに損害を与える可能性のある以下の行為を挙げています。

  1. フランチャイジーに対して、正当な理由なく、以下のような制限的な条件を設定すること。
  2. フランチャイズ契約で指定された製品/サービスとは無関係の製品/サービスを、フランチャイザーまたはフランチャイザーが指定した者からのみ購入することをフランチャイジーに要求すること。
  3. フランチャイジーに対して、実際のフランチャイジーの事業に必要な量を超える製品または原材料を購入することを要求し、それら過剰な量の製品または原材料の返品を禁止すること。
  4. フランチャイズ契約が締結された後に、フランチャイジーに他の製品やサービスの購入、フランチャイズ契約に明記されている以上の行為を行うことを要求するなど、フランチャイジーが遵守すべき追加条件を課すこと。ただし、合理的なビジネス上の理由がある場合、またはフランチャイズの評判、品質、水準を維持する目的がある場合はこの限りではなく、これらの追加条件は書面で作成されるものとする。
  5. フランチャイジーが、正当な理由なく、同等の品質でより低価格の商品を提供する他の事業者から商品を購入することを制限すること。
  6. 正当な理由なく、フランチャイジーが生鮮品や賞味期限切れ間近の商品を値引きすることを制限すること。
  7. 正当な理由なく、フランチャイジー間で差別的な条件を課し、取引上の不当な差別を引き起こすこと。
  8. フランチャイザーの評判、品質、水準を維持する以外の目的で、不当な条件を課すこと。