著作権法は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とし(著作権法第1条)、昭和45年に制定されました。その後、インターネットの普及やデジタル化等の社会の変化や、関連法令の改正に応じて、改正されています。
(1) 著作物について
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいうと定義されています(著作権法第2条1項1号)。
(2) 著作者について
著作物を創作する者をいうと定義されています(著作権法第2条1項2号)。
(3) 著作者の権利の発生及び保護期間について
著作権の存続期間は、著作物を創作した時点で始まり(著作権法第51条第1項)、原則として著作者の死後70年を経過するまで存続します(著作権法第51条第2項)。例外として、無名・変名(周知の変名等、一定の場合を除く)の著作物は、公表後70年を経過するまで存続するほか(その前に死後70年経過が認められれば、その時点まで)(著作権法第52条第1項、第2項)、団体名義の著作物及び映画の著作物は、原則として公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年)を経過するまで存続します(著作権法第53条及び第54条)。このほか、国際条約等の規定が適用される場合の保護期間については、特例が設けられています(著作権法第58条)。
(4) 著作者の権利の内容について
1 著作者人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)
著作者は、公表権(著作権法第18条第1項)、氏名表示権(著作権法第19条第1項)、同一性保持権(その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないこと)(著作権法第20条)を有します。
2 著作権(財産権)(著作物の利用を許諾したり禁止する権利)
著作者は、その著作物について、複製権(第21条)、上演権及び演奏権(第22条)、上映権(第22条の2)、公衆送信権等(第23条第1項、第2項)、口述権(第24条)、展示権(第25条)、頒布権(第26条第1項、第2項)、譲渡権(第26条の2第1項)、貸与権(第26条の3)、翻訳権、翻案権等(第27条)、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、これら著作権に含まれる権利について当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すること)(第28条)を専有します。
(5) 著作隣接権
著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者(実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者)に与えられる権利です(著作権法第89条)。その保護期間は、実演、レコードの固定、放送又は有線放送を行った時点で発生し、実演、レコード発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過したとき、放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときに満了します(著作権法第101条第1項、第2項)。
(6) 著作物が自由に使える場合
著作権法は、一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して、著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。しかし、著作権が制限される場合でも、著作者人格権は制限されません(著作権法第50条)。また、上記著作権法が許容する例外規定に基づき複製されたものを同例外規定の目的外に使うことは禁止されており(著作権法第49条第1項、第2項)、利用にあたっては、原則として出所の明示をする必要があると定められているなど(著作権法第48条)、著作権者等の利益を不当に害さないように、また、著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう、その条件が定められています。
著作物が自由に使える場合の例として、私的使用のための複製(著作権法第30条)、図書館等における複製(著作権法第31条)、教科用図書等への掲載(著作権法第33条)、視覚障害者等のための複製等(著作権法第37条)、営利を目的としない上演等(著作権法第38条)、時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)、裁判手続き等における複製(著作権法第42条)、情報公開法等における開示のための利用(著作権法第42条の2)等が挙げられ、該当する場合は、利用が認められる条件について規定を確認する必要があります。
(7) 著作物の利用方法
他人の著作物は、上述(6)の通り、著作権が制限を受けている場合を例外として、原則として、著作権者に無断で利用することはできません。他人の著作物を利用する方法としては、以下の方法があります。
1 著作者からの利用の許諾(著作権法第63条)
2 出版権の設定(著作権法第79条~第88条)
3 著作権の譲渡(著作権法第61条)
4 文化庁長官の裁定(著作権法第67条~第69条)
(8) 著作権の侵害、罰則規定、紛争処理
著作権法に定められている権利を侵害された者は、差し止め請求、損害賠償請求、名誉回復の措置の請求等の権利侵害に対する救済を請求することができます(著作権法第112条~第118条)。また、著作権法の規定に違反した者は、罰則規定として、最大10年以下の懲役、又は1,000万円以下の罰金が科せられます(著作権法第119条~第124条)。
そのほか、著作権に関する紛争につきあっせんによりその解決を図るため、文化庁に著作権紛争解決あっせん委員が置かれており(著作権法第105条第1項)、当事者は文化庁長官に対し、あっせんの申請をすることができます(著作権法第106条)。
(9) 日本が加盟している国際条約
1 著作権条約
- ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)
- 万国著作権条約
2 著作隣接権条約
- 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約
- 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約
3 マラケシュ条約
- 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約
4 著作権・著作隣接権関係条約
- TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)
- WIPO著作権条約(著作権に関する世界知的所有権機関条約)
- WIPO実演・レコード条約(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)