【マレーシアの遺言に関する法制度の概要 】

(1) 概要

 マレーシアの遺言は、イスラム教徒の遺言と非イスラム教徒の遺言があります。イスラム教徒の遺言については州ごとの異なる法令により規定されています。一方、非イスラム教徒の遺言は、遺言法(Wills Act 1959)により定められています。

 そして、遺言とは、遺言者の財産その他の事項について、遺言者がその死後に効力を生じさせることを望む意図をもった宣言をいいます(遺言法2条)。被相続人の遺言が存在すれば、原則、遺言の内容に従い被相続人の財産が分配されます。

(2) 遺言の作成

 有効な遺言を作成するためには、遺言者は以下の要件・能力が必要となります。

  1. 遺言を書いた時点で18歳以上であること(遺言法4条)。
  2. 判断能力を有する健全な精神の持ち主であること(遺言法3条)。
  3. 遺言書を書面で残し、署名することができること(遺言法5条)。

 このほか、有効な遺言書を作成するためには、2人の証人(遺言者及び受益者を除く)が署名する必要があります。そして、署名中は、全ての当事者が立ち会う必要があり、個別に署名することはできません(遺言法5条)。

(3) 遺言の執行

 全ての遺言は、遺言によって反対の意思が示されない限り、遺言者の死亡直前に執行され効力が生じると解釈されます(遺言法18条)。遺言は、故意に撤回したり、結婚したり、イスラム教に改宗したりしない限り有効となります。

遺言者が死亡した場合、遺言執行者に指名された者は、遺言者が遺言書で述べた通りに遺産分配の手続を開始するため、裁判所に検認(Grant of Probate)を申請します。

なお、遺言執行者については、証人の要件とは異なり、受益者を指名することができます。