バングラデシュにおいて、遺言は、1925年相続法(The Succession Act, 1925(以下、「相続法」という))にて定められていますが、イスラム法の影響を大きく受けます。
相続法第2条(h)にて、「遺言」は、遺言者が死後に効力をもつことを望む、財産に関する遺言者の意思の法的宣言を意味する、と定義されています。また、同法第59条にて、未成年(18歳未満)ではない健全な精神をもつ全ての者は、遺言によって財産の処分をすることができると定められています。
遺言には、特権遺言(遺言者が遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員である場合)と非特権遺言(特権遺言以外)が規定されています。相続法第63条では非特権遺言について規定しており、遺言者が署名又は押印又は遺言者の立会いのもと他の者が署名するものとしています(相続法第63条(a))。また、少なくとも2人の証人が署名又は押印しなければならないと規定しています(同条(c))。特権遺言は相続法第66条にて、死亡の危急に迫った場合などを想定して定められています。遺言は、遺言者が任命する「遺言執行者」によって執行され(相続法第2条(c))、遺言執行者が任命されていない場合は、管轄機関が、遺言を執行する者を任命します(相続法第2条8(a))。遺言者の死後、検認によって遺言執行者の行為が有効となります(相続法第227条)。