【タイの労働組合及びストライキに関する法制度の概要 】

(1) 関連する法令

タイにおける労働組合やストライキ等に関する法律として、労働関係法(Labor Relations Act B.E.2518 (1975))が定められています。

(2) 労働組合

 労働組合は、雇用条件に関する利益を求め、これを保護し、使用者と被用者との間および被用者間の良好な関係を促進することを目的として設立することができます(同法第86条)。労働組合は同一使用者の被雇用者による結成、及び、同一業種において労働する被雇用者による結成が定められており、労働組合の発起人は、成人かつタイ国籍者である必要があります(同法第88条)。

 労働組合を設立する場合、当該労働組合の規約を作成し、登録をする必要があります(同法第87条)。登録申請にあたり、少なくとも10名以上が発起人となり、申請書には発起人全ての氏名、年齢、職業、住所を記載する必要があります(同法第89条)。

 労働組合の組合員は、労働組合の登録申請者と同一使用者の被雇用者、または同一業種において労働する被雇用者で、かつ15歳以上の者でなければならないとされています(同法第95条)。労働組合の組合員資格は、死亡、辞任、総会による除名、または労働組合の規則に基づいて終了します(同法第97条)。

  • ストライキ

 ストライキについては、以下の所定の手続きを経て行う必要があります。

  1. 労働協約(雇用条件に関する使用者と被雇用者との間の合意事項)の規程に関する要求や修正を要望する場合、使用者又は被雇用者は書面にて相手方に当該要望を提出します(同法第13条)。
  2. 被雇用者側が要望書を提出する場合、全被雇用者数の15%以上の被雇用者の氏名と署名が必要となります。労働組合が被雇用者を代表して要望書を提出する場合、当該組合の組合員数は、全被雇用者数の20%以上である必要があります。この場合、要望書には被雇用者の氏名及び署名を記載する必要はありません(同法第15条)。
  3. 要望書を受け取った当事者は、要望書を提出した当事者に対し、遅滞なく受領者の氏名または代表者の氏名を書面で通知し、両当事者は要望書を受領した日から3日以内に協議を開始します(同法第16条)。
  4. 3の期間内に協議がなされなかった場合、または協議がなされたが合意に至らなかった場合、労働争議が発生したものとみなされ、要望を行った当事者は、3の期間が経過した時点、または合意に至らなかった時点から24時間以内に、労働争議調停官に書面で通知する必要があります(同法第21条)。
  5. 4の通知を受けた労働争議調停官は、通知を受け取った日から5日以内に、調停を行います。この期間内に両当事者が合意できない場合は、被雇用者は、ストライキを行うことができます(同法第22条)。
  6. ストライキをする場合、被雇用者側は、ストライキ開始の24時間以上前までに、労働争議調停官及び使用者へ、文書により通知をする必要があります(同法第34条)。また、ストライキを行う場合には、労働組合の総会にて労働組合員総数の2分の1以上の承認を得なければならず、投票は無記名投票で行われるとされています(同法第103条8号)。