特許に関する事項は、特許法にて定められており、その目的は、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」と定義されています(特許法第1条)。特許を受ける権利は発明者にあり(特許法第29条第1項柱書)、その権利は、移転することができます(特許法第33条第1項)。特許権の効力として、特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有しますが、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りではありません(特許法第68条)。特許権の存続期間は、出願の日から20年ですが(特許法第67条第1項)、特許権の設定の登録が特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができます(同条第2項)。
(1) 特許法上の発明
特許法で保護対象となりうる発明について「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています(特許法第2条第1項)。
(2) 特許を受けることができる発明とは
特許を受けることができる発明の要件は以下の通りです。
1 産業上利用することができるかどうか(特許法第29条第1項柱書)
2 新規性(特許法第29条第1項)
新しいものであるかどうかで新規性が判断されます。以下の場合は、特許を受けることはできません。
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(特許法第29条第1項第1号)
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(同項第2号)
- 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(同項第3号)
3 進歩性(特許法第29条第2項)
「容易に発明をすることができた」かどうかで進歩性が判断されます。特許出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、上記の発明(特許法第29条第1項第1号~第3号)に基づいて容易に発明をすることができたときは、特許を受けることはできません。
その他、公序良俗に反する発明は特許を受けることはできません(特許法第32条)。また、先願主義が採用されており、先に出願されていた場合も、特許を受けることはできません(特許法第39条及び特許法第29条の2)。
(3) 職務発明
使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有すると定められています(特許法第35条第1項)。これに対して、従業者等は「相当の利益」を受ける権利を有し(同条第4項)、「相当の利益」の決定は、原則として使用者等と従業者等との間の自主的な取決めに委ねられていますが、自主的な取決めに従って利益を付与することが不合理である場合や、自主的な取決めが存在しなかった場合は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が負う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して決定されます(同条第7項)。
(4) 出願から特許権取得までの流れ
特許権を出願(特許法第36条)すると、方式審査が行われ、出願書類が審査されます。さらに審査請求(特許法第48条の3第1項)をすると審査官による実体審査が行われ、特許を受けることができる発明の要件を満たしているか、拒絶理由がないかどうか調べられます。特許の要件を満たしている場合又は拒絶の理由が解消された場合は特許査定がなされ(特許法第51条)、特許料の納付により特許原簿に登録されると特許権が発生します(特許法第66条)。特許の要件を満たしていないものは、拒絶査定が出されます(特許法第49条)。拒絶査定を受けた者で、その査定に不服がある場合は、その査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます(特許法第121条)。