【メキシコの特許法の概要 】

(1) 関連する法令

メキシコにおいて、特許は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)及び産業財産法規則(Reglamento a la Ley de Propiedad Industrial)に規定されています。職務発明に関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に関連する条文が設けられています。

(2) メキシコで保護される特許 

 特許によって保護される発明とは、「自然界に存在する材料若しくはエネルギーを人の特定の需要を満たすよう使用することができる形に変える人の創造」であると定義されています。すべての技術分野における発明のうち、新規性があり、発明的活動の結果であり、かつ産業上の利用が可能なものは、特許を受けることができます。

 ただし、次のものは発明とはみなされません。

  1. 科学理論や原則の発見
  2. 数学的方法
  3. 文学、芸術作品、又はその他の美的創造物
  4. ゲームや経済的商業活動のための知的活動を実施するスキーム、計画、規則、方法
  5. コンピュータプログラム
  6. 情報を提示する方法
  7. 自然界に見られる生物学的及び遺伝的物質
  8. 既知の発明の並置又は既知の製品の組み合わせ。ただし、個別に機能できない組み合わせの場合、それらの特徴的な性質又は機能が、当該分野の技術に熟知する者にとっても自明でない産業上の成果や利用法を生み出すように変更されている場合を除く

また、次の場合は特許性を有するとはみなされません。

  1. 商業的利用が公序良俗に反し、又は法律の規定に反する発明(人、動物、植物の健康若しくは生命を保護するため、又は環境への深刻な損害を回避するために利用を阻止しなければならないものを含む)であって、特に、ヒト及びその製品のクローン作成手順、ヒト及びその製品の生殖上の遺伝的同一性を修正する手順で、これらがヒトを開発する可能性を示唆する場合、工業的又は商業的目的のためのヒト胚の使用、動物の遺伝的同一性を修正する手順で、ヒト又は動物にとって実質的な医学的又は獣医学的有用性がなく苦痛を伴うもの、及び当該手順の結果として生じる動物
  2. 植物の品種及び動物の品種(微生物の場合を除く)
  3. 植物又は動物を得るための本質的に生物学的な手順、及びこれらの手順から得られる生成物。ただし、微生物学的手順、その他の技術的手順、又はこれらの手順によって得られた生成物を目的とする発明は除く
  4. 人又は動物の身体の外科的又は治療的処置の方法、及びそれらに適用される診断方法
  5. 構成や発展の異なる段階における人体、ゲノムの全体又は部分的つながりを含む人体の構成の単純な発見(ただし、自然環境から分離され、技術的な手順を経て得られた生物材料は、それが自然界に既に存在している場合でも、特許可能な発明の対象となりえる)。なお、核酸又はタンパク質の全配列又は部分配列の産業上の利用は、特許出願において明示的に開示されなければならない

(3) 特許を受けることができる者

 発明を行った自然人又はその承継人は、自己又は他者の利益のために、特許を得ることによって、その発明を利用する独占的な権利を有することになります。二人以上のものが共同して発明を行った場合は、特許を受ける権利は、これらのものが共有することになります。

 労働者が職務において行った発明の名称、権利、使用については、次のように連邦労働法に規定されています。

1 発明者は、発明者として自らの名前を表示する権利を有する

2 労働者が研究業務又は企業で使用されるプロセスの改良に従事する場合、発明の権利及び特許を利用する権利は使用者に帰属する。発明者は、発明の重要性及びそれが使用者にもたらす利益が発明者の受領する給与とつり合いがとれていない場合には、当事者間の合意又は裁判所によって定められる補完的な報酬を受ける権利を有する。

3 2以外の場合において、発明の所有権はその発明をした者に帰属するが、使用者は、その発明及び対応する特許の独占的な使用又は取得について優先的な権利を有する

(4) 特許出願から登録までの手続

 メキシコでの出願から登録までの手続きは、主管官庁であるメキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial、以下「IMPI」)に対して行わなければなりません。特許出願の手続の流れは次のとおりです。

1 願書の提出

2 方式審査

3 特許公報への出願公開

4 異議申立(出願公開から2か月間、当該出願に対する異議の受付)

5 実体審査

要件を満たしていない場合、拒絶理由通知が出され2か月間の回答期間が与えられる

要件を満たしている場合、特許査定となる

6 特許年金の納付

特許権の維持には、特許査定の通知を受領後2か月以内に1回目の特許年金を支払わなければならない

年金の支払いは5年ごと

7 特許証発行と特許公報掲載

特許出願は、方式審査を通過し、出願日又は優先権を主張する日から18ヶ月が経過すると公開されます。また、申請により早期公開も可能です。なお、すべての出願が実体審査の対象であり、審査請求は要しません。

 また、メキシコ又は外国において特許出願をした発明と同一の発明に関し、最初の出願をした出願人又はその承継人は、当該同一の発明のメキシコにおける出願について、最初の出願の出願日から起算して12ヶ月の期間内に出願することを条件に、優先権(先の出願と後の出願との間の期間に行われた行為によって不利な取り扱いを受けないとする権利)を有します。

特許権の存続期間は、特許出願日から 20 年間であり、この期間を延長することはできません。ただし、特許から取得までの手続きにおいて、IMPIに直接起因する理由によって、5年以上の遅延がある場合には、出願人は補完証明書(certificado complementario)の発行を申請することができ、この付与が決定された場合は、特許出願日から20年経過後、5年を超えない範囲(補完証明書において定められた期間)、その発明を利用する独占的な権利を有することができます。