(1) 概要
特許に関する事項は、特許意匠法((The Patents and Designs Act, 1911)及び特許意匠規則(The Patent and Designs Rules, 1933)が適用されます。特許及び意匠の政府担当機関は、特許意匠商標局です。なお、2021年2月に特許法案及び工業意匠法案が提出され、内閣に承認されました。法案では、特許の登録期間が、20年認められています(現在は16年間)。
特許は、バングラデシュ国民であるか否か、個人又は共同での申請かにかかわらず、所定の方法で特許意匠商標局に特許を出願することができます(特許意匠法3条(1)(2))。出願書には、出願人が発明を所有し、真正かつ最初の発明者であることの宣言を含み、仮又は完全明細書によって出願されなければなりません(同条(3))。真正かつ最初の発明者でない者も出願の当事者となることができますが、譲渡契約など、真正かつ最初の発明者からの同意を提示しなければなりません(同条(4))(特許意匠規則10条(2))。特許の登録が認められる場合、基本的に出願日から24ヶ月以内に登録されなければならないと定められており(特許意匠法10条(2))、前述の通り、登録期間は16年間です(特許意匠法14条(1))。また、特許の効果として、特許意匠商標局の公印が捺印された特許は、バングラデシュ全土で発明を生産、販売、使用すること及びそれらを他の者に許可する排他的特権を特許権者に与えます(特許意匠法12条(1))。
(2) 出願から登録までの手続き
出願人は必要書類を提出し、要件を満たしていない場合は、拒絶又は補正が求められます。出願日から18ヶ月以内に出願人が要件を満たし、受理されない限り、(出願人が決定に対して申し立てを提起した場合を除き)拒絶されたものとみなされますが、期間満了前又は満了後3ヶ月以内に請求した場合は、3ヶ月以下の延長が認められます(特許意匠法第5条(4))。
出願が受理されると、公告され、当該出願に異議のある者は、4ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます(特許意匠法9条(1))。異議申立てがなされた場合、登録官は、出願人に異議申立てを通知し、出願人及び異議申立人が聴聞を希望する場合は、聴聞を行った後、当該事案について決定が下されます(同条(2))。
異議がない場合、又は異議が申し立てられた場合で特許の付与に有利な決定がなされた場合、規定の登録料の支払いをもって、政府が適切と考える条件(もしあれば)に従い特許権が付与されるものとし、登録官は特許を特許意匠商標局の公印で捺印します(特許意匠法10条(1))。
特許の登録は、基本的に出願日から24ヶ月以内でなければならないとされていますが、登録官が認めた場合など、法律に規定された要件を満たした場合は延長されます(特許意匠法10条(2))。
また、法律に別段の規定がない限り、特許は、出願日をもって登録されますが、出願受理の公告の前に行われた侵害については、法的措置をとることができないことに注意が必要です(特許意匠法11条)。
(3) 特許侵害訴訟
特許権者は、管轄権を有する地方裁判所において、発明に関して特許意匠法に基づいて取得した特許期間の継続中に、特許権者の利用許諾なく、発明を製造、販売、若しくは使用、又は偽造、模倣した者に対して訴訟を起こすことができます(特許意匠法29条(1))。ただし、特許権者は、被告人からのいかなる侵害についても、侵害の日に特許の存在を認識していない、又は侵害を認識する合理的な手段を持っていなかったことを被告人が証明した場合は、損害賠償を請求する権利を有しないとされています(特許意匠法第30条)。
特許侵害訴訟において、裁判所は、いずれかの当事者による請求があれば、裁判所が適切とみなす差し止め、検査、算定を求める命令を下し、適切とみなす条件を課すことができ、当該差止・検査・算定及びその手続きについて適切とみなす指示を与えることができます(特許意匠法31条)。