【フィリピンの株式譲渡手続の概要 】

フィリピンにおいて、株式は、個人財産として、売却、贈与、相続を原因として譲渡することが可能であり、担保権の対象とすることもできます。

 フィリピン改正会社法第62条は、株式譲渡に関する要件を規定しています。

(1) 株券の交付

(2) 株券上の裏書

(3) 株式名簿上の名義書換

の三つの要件です。

 株券の交付及び裏書によって譲渡は有効といえますが、会社及び第三者との間でもこれを有効とするためには、株主名簿上の名義が書換えられる必要があります。SEC(証券取引委員会)の見解によると、株主としての権利は、会社の株主名簿に名義が記載されて初めて発生します。

 また、SECは、株券の交付及び裏書による方法によるほか、定款で特定の譲渡方法が指定されている場合を除き、証書(Deed)による譲渡も可能と指摘しています。 ただし、証書による譲渡は、株券が発行されておらず、それを株主が保有していない場合にのみ認められています。

 さらに、 譲受人は、当該株式譲渡取引にかかる税金を支払い、その後、BIRから登録許可証(CAR)を取得する必要があります。

 これらのBIR(内国歳入庁)に関する手続は必ず履践する必要があり、懈怠した場合、秘書役が税法の規定に基づいて責任を問われることになることに留意する必要があります。Revenue Memorandum Order No.15-03では、株主名簿の書換の前提としてCARを発行することが求められています。また、Revenue Regulations No.06-08の第11節では、納税したことを示す領収書が秘書役に提出されない限り、その株式移転を禁止しています。

 BIRは対しキャピタルゲイン税と印紙税の支払いが完了した後、必要書類とともにCAR取得の申請を行います。未上場株式の譲渡の場合、これらの手続に関する必要書類は以下となります。

(1) TINナンバー、

(2) ノータライズ済の譲渡証書の原本及び写し、

(3) 株券の原本及び写し、

(4) 株式取得費用の証明、

(5) 支払証明としての領収書又は預金通帳、

(6) 取引日に最も近い発行会社の監査済財務諸表(AFS)