【日本におけるE-コマース関連規制の概要 】

E-コマースに関連する法律は多く、以下が挙げられます(経済産業省:電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月))。紙面の都合上、特定商取引法におけるE-コマースの関連規定をご説明します。

  1. 関連法
法 律目 的
特定商取引法
(特定商取引に関する法律)
特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、
連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引
販売取引並びに訪問購入に係る取引)を公正にし、及び購入者等が
受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、
あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて
国民経済の健全な発展に寄与すること
景品表示法
(不当景品類及び不当表示防止法)
商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止
するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある
行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること
個人情報保護法
(個人情報の保護に関する法律)
高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、
個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の
個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務
等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定める
ことにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある
経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の
有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること
資金決済法
(資金決済に関する法律)
資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、
当該サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う
為替取引、暗号資産の交換等及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算
について、登録その他の必要な措置を講じ、もって資金決済システムの安全性、
効率性及び利便性の向上に資すること
通則法
(法の適用に関する通則法)
法の適用に関する通則について定めるもの
(越境ECの準拠法に関する規定)
電子契約法
(電子消費者契約及び電子承諾通知に
関する民法の特例に関する法律)
消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について特定の錯誤
があった場合に関し、民法の特例を定めるもの
特定電子メール法
(特定電子メールの送信の適正化等に
関する法律)
一時に多数の者に対してされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の
支障を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化
のための措置等を定めることにより、電子メールの利用についての良好な環境の整備
を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与すること

   2. 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

 特定商取引法は、上表にある通り、7種類の取引を対象としています。特定商取引法第2条2項では、「通信販売」とは、販売業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下、「郵便等」)により売買契約の申込みを受けて行う商品若の販売であって電話勧誘販売に該当しないものをいうと規定しており、E-コマースは、通信販売に該当します。今回は、商品の販売業者がE-コマースにて商品を販売するケースを想定してご説明しますが、特定権利の販売及び役務の提供の場合にも同様の規定が適用されます。

   3. 広告規制

 販売業者が、商品の販売条件について広告をする際には、重要事項(商品の販売価格、支払いの時期及び方法、契約の解除に関する事項等)を表示することを義務付けています。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、これらの事項の一部を表示しないことができます(第11条)。また、広告をするときは、当該商品の性能、売買契約の申込みの撤回又は解除(以下「申込みの撤回等」)に関する事項その他省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないと規定されており、誇大広告等は禁止されています(第12条)。

   4. 承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供の禁止等

 商品の販売条件について、その相手方の承諾を得ないで電子メール広告をしてはならないと規定されています。ただし、相手方の請求があるときや、省令で定める方法により当該申込み若しくは当該契約の内容又は当該契約の履行に関する事項を通知する場合において、省令で定めるところにより通信販売電子メール広告をするときや、通常メール広告の提供を受ける者の利益を損なうおそれがないと認められる場合として省令で定める場合において、通信販売電子メール広告をするときなどは除かれます(第12条の3第1項)。

   5. 通信販売における承諾等の通知

 販売業者は、売買契約の申込みをした者から当該商品の引渡しに先立って当該商品の代金の全部又は一部を受領する通信販売をする場合において、郵便等により当該商品につき売買契約の申込みを受け、かつ、当該商品の代金の全部又は一部を受領したときは、遅滞なく、省令で定めるところにより、その申込みを承諾する旨又は承諾しない旨、その他の省令で定める事項をその者に書面により、又は、申込者の承諾を得た場合は、電磁的方法その他の法令で定める方法により、通知しなければなりません。ただし、当該商品の代金の全部又は一部を受領した後遅滞なく当該商品を送付したときは、この限りではありません(第13条1項及び2項)。

  6. 通信販売における契約の解除等

 購入者は、その売買契約に係る商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回等を行うことができますが、販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合には、この限りでないと規定されています(第15条の3第1項)。販売業者は、関連法令に定められた方法で、申し込みの撤回等に関する特約(返品の可否、返品の条件等)を表示していない場合は、同法により、8日以内であれば購入者による返品が認められることになりますので注意が必要です。また、申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡しが既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担となると規定されています(第15条の3第2項)。