バングラデシュでは、Eコマースの急成長に伴い、これまでNational Digital Commerce Policy, 2018(2020年に改正)、Digital Commerce Operation Guidelines, 2021(以下「ガイドライン」)が商務省により施行されています。実務で必要な事項を定めているガイドラインの概要をご紹介します。
- 目的及び適用範囲
デジタルコマース事業における透明性、説明責任を促進し、雇用機会と消費者保護を創出し、デジタルコマース事業に規律をもたらし、起業家に機会を提供する競争市場を創出することにより、消費者の信頼と権利を高め、確保するための措置を講じることを目的としています。バングラデシュ国内の事業及びデジタルコマース管理にその関連法が適用される事業を行う全てのデジタルコマース事業者に適用されます。
2. 事業者の要件
ガイドラインでは、すべてのデジタルコマースオペレーターが営業許可、VAT登録、納税者識別番号、少なくとも1つの独自のビジネスID番号(UBID)又は個人の小売アカウント(PRA)番号を取得し、それらをマーケット又はソーシャルメディアページに表示する必要があると明記しています。UBID又はDBIDの登録は、2022年2月に立ち上げられたポータルmygov.bdにて可能です。すべての外国のデジタルコマース事業者は、バングラデシュで登録し、事業実施のために当局から許可を得る必要があります。
マーケットは、第三者によって提供される商品又はサービスに関する情報が提供され、取引プロセスが完結するデジタルコマースサイト又はポータルとして定義されます。マーケットは、第三者の売り手との間で別段の合意がない限り、必要な手数料と配送料を差し引いた金額を10日以内に第三者の売り手に支払う必要があります。
3. 必須記載事項
購入と返品の詳細な条件、商品の数量、材料、価格、配送料、その他の料金などを表示し、さらに、購入者が情報に基づいて決定できるように、販売する商品の画像や動画などを提示する必要があります。デジタルコマース市場又はFacebookページは、ベンガル語およびその他の言語(必要な場合)で記載し、購入と販売、払い戻し、返品又は商品の変更、配送方法、配送時期その他の条件のポリシーを明確に表示する必要があります。
4. 制限事項
爆発物など禁止されている商品やサービスをデジタルコマースプラットフォームで購入又は販売することは禁止されています。オンライン競売又はオンライン賭博、政府の承認なしの宝くじや抽選はできません。また、医薬品管理局からのライセンスのない、デジタルコマースプラットフォームでの医薬品の販売、バングラデシュ銀行の許可なく、デジタルメディアを介した金銭に関連するビジネスを行うことはできません。
5. その他の要件
デジタルコマースプラットフォームは、個人データを取得する場合、どのような情報を取得するのか、どこに保存されるのか、使用目的、処理プロセスについて知らせ、購入者の事前の承認を得る必要があります。バングラデシュ銀行の許可なしに、又はバングラデシュ銀行の指示に違反して、デジタルウォレット、ギフトカード、現金バウチャー又はその他の支払い方法を実施することはできません。事業に関連するすべての情報は、少なくとも6年間保存され、要求に応じて政府機関に提供されるものとします。配送のタイムラインも明確化されており、ガイドラインに従い、同じ都市内で配送される製品は、支払いが行われる場合は5日以内、別の都市に配送される場合は10日以内に配送されるものとします。日用品又は生鮮品の場合、配達はより早く行われ、購入者に同様に知らされなければなりません。
6. 苦情と救済措置のメカニズム
マーケットには、消費者が苦情を申し立てることができる必要な電話番号、電子メール、その他の通信手段を含める必要があります。かかる苦情は記録されなければならず、解決策は72時間以内に消費者に提供されなければなりません。デジタルコマースプラットフォームは、適切な評価及びレビューシステムを確保することになっており、購入者はそれらを表示して情報に基づいた選択を行うことができ、レビューはプラットフォームによって消去されません。
当局は、ガイドラインに準拠していないプラットフォームに対して必要な措置を講じることができ、その措置には、マーケットの禁止、営業許可、会社登記、VAT登録の取り消しなどが含まれます。ガイドラインを遵守しないこと生じた損失に対する救済措置として、影響を受ける者又は購入者は、消費者権利保護局を含む関係裁判所に苦情を申し立てることができます。