マレーシアにおける相続手続は、遺産分配法(Distribution Act 1958)によって規律されます。
(1) 相続に関する法の適用
相続財産が動産の場合、被相続人が死亡時に居住していた国の法律により相続が行われ、相続財産が不動産の場合、被相続人が死亡した場所にかかわらず、遺産分配法の規定に従い相続が行われます(遺産分配法4条)。
そして、遺産分配法6条では、ある者が遺言を残さずに死亡した場合、相続財産の管理費用等を支払った後は、この法律に従い相続財産が分配される旨規定しています。相続財産の一部について、遺言が残されている場合、遺言により遺贈されない相続財産については、遺産分配法が適用されます(遺産分配法8条)。
(2) 相続人の種類と法定相続分
遺産分配法6条1項によれば、相続人の種類と法定相続分は以下の通りです。
相続人 | 親の相続分 | 配偶者の相続分 | 子の相続分 |
親のみ | 財産全部 | ― | ― |
配偶者のみ | ― | 財産全部 | ― |
子のみ | ― | ― | 財産全部 |
親と配偶者 | 2分の1 | 2分の1 | ― |
配偶者と子 | ― | 3分の1 | 3分の2 |
親と子 | 3分の1 | ― | 3分の2 |
親、配偶者及び子 | 4分の1 | 4分の1 | 2分の1 |
被相続人が法に基づき複数の妻との婚姻が許可されていた場合、複数の妻は、一人の妻が得るべき持ち分を平等に分配することとなります(遺産分配法6条2項)。
また、相続人の子が亡くなっている場合、その子孫が「子」に含まれます。「子」は嫡出子でなければならず、被相続人が法に基づき複数の妻との婚姻を許可されていた場合は、当該妻の子が含まれますが、養子縁組法(Adoption Act 1952)の規定に基づき養子縁組された子以外の子は含まれません(遺産分配法3条)。