バングラデシュの相続は、属する宗教によって異なるルールや慣習に従います。1925年相続法(The Succession Act, 1925(以下、「相続法」という))にて遺言や相続の概要が規定されているものの、多くの規定はイスラム教徒には適用されず、当事者がイスラム教徒の場合、相続、結婚、持参金(ダウリー)、離婚、遺贈、後見人、寄進等については、イスラム法が適用されます。
(1) イスラム法による相続人
イスラム教徒が死亡した場合、遺産からi) 埋葬および死亡費用、ii) 死亡の3か月前までのサービス、iii) 債務、iv) 遺言にかかる費用、v) 資産にかかる相続証明書の支払いの後に残ったものが、イスラム法の規定に従って相続人に分割されます。
主たる相続人として、① Jabiul Furujと② Asbaganが挙げられます。① Jabiul Furujには、夫、父、祖父、義兄弟、妻、娘、息子の娘、母、父方の祖母、母方の祖母、姉妹、義姉妹(継母の娘)、義姉妹(継父の娘)が含まれ、このカテゴリのなかで、相続人の家族構成等の条件によって相続分の割合が決められています。② Asbaganには、i) 息子、娘、息子の息子、息子の娘、ii) 父、祖父、iii) 兄弟姉妹、義兄弟、甥、義兄弟(継母の息子)の息子、兄弟の息子、義兄弟(継母の息子)の息子の息子、iv) 叔父又は伯父、いとこ、いとこの息子などが含まれます。
(2) イスラム法における相続手続き
Jabiul Furuj(上記)に含まれる相続人の間で、イスラム法に規定された割合で遺産を分割し、残りをAsbagan(上記)に含まれる相続人の間で、規定の割合で分割します。Asbaganに該当する相続人がいない場合は、夫及び妻を除くJabiul Furujの相続人の間で、再分割されます。
(3) 相続法
無遺言相続及び遺言による相続について規定していますが、無遺言相続について、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、仏教徒、シーク教徒及びジャイナ教徒の財産には適用されません。更に、ゾロアスター教徒とゾロアスター教徒以外で異なる規定が定められています。遺言による相続は、ヒンドゥー教徒、仏教徒、シーク教徒及びジャイナ教徒による遺言、バングラデシュ国内の不動産資産に関してなされたバングラデシュ国外での遺言に対して適用されます。