(1) セクシャルハラスメントの関連法令
バングラデシュでは、セクシャルハラスメントについて規定する法令はありませんが、関連するものとして、以下が挙げられます。
法 令 | 規 定 |
刑法1860年第509条 | 「女性の謙虚さを侵害する」ことを目的とした行為、 言葉、態度を犯罪とし、1年以下の懲役及び罰金が科せられます |
Nari-O-Shishu Nirjatan Daman Ain 2000 (女性及び子供の抑圧防止法)第10条 | 「Jounopiron」(一般に「性的抑圧」と訳される) と呼ばれる行為を犯罪とし、女性又は子供(身体の一部又は対象物) に触れる行為又は性的欲求を不法に満たすために女性の謙虚さを 侵害する行為を犯罪としています |
バングラデシュ労働法2006年第332条 | いかなる事業場のいかなる者も、雇用されている女性に対して、 下品又は無礼に見える可能性のある行為、その女性の謙虚さ又 は名誉を害する行為をしてはならないと規定しています。 しかし、この規定は、女性が職場で直面する嫌がらせや暴力に ついて具体的に言及しておらず、罰則も25,000タカの罰金と限定的です |
その他、2009年に、高等裁判所は、大学のキャンパスや職場において女性に対するセクシャルハラスメントが蔓延していることに異議を唱えるバングラデシュ全国女性弁護士協会(BNWLA)による請願書を受け、職場及び教育機関におけるセクシャルハラスメントの禁止、防止及び是正に関する11ポイントの指令(以下「ガイドライン」)を発行しました(29 BLD HCD 415)。
(2) ガイドラインの概要
セクシャルハラスメントに関する啓発を目的とし、バングラデシュ国内の全ての職場及び教育機関を対象として発行されました。憲法は男女平等を保障しており、使用者の義務として、性的虐待及びハラスメントの犯罪を防止又は阻止するために有効なメカニズムを維持し、セクシャルハラスメントの犯罪の訴追のための効果的な措置を提供しなければならないとしています。
セクシャルハラスメントの定義には、性的な理由に基づく身体的接触、性的な意味合いをもつ言葉などによる表現、権限の濫用により性的な性質を伴う身体的関係を持つことを試みること、ストーカー行為、愛のプロポーズの拒否を理由として脅迫すること、脅迫によって性的関係をもつこと等、幅広い行為が含まれています。
全ての使用者、職場の責任者、教育機関は、セクシャルハラスメントを防止するための効果的な対策を講じなければならないとされ、i) セクシャルハラスメント禁止の効果的な周知、ii) ジェンダー差別及びセクシャルハラスメントに対する憲法の規定及び罰則規定についての周知、iii) 職場や教育機関が女性に対して敵対的な環境でないことを保証し、女性の労働者や学生が男性の同僚や学生と比較して不利な立場に置かれていないという自信と信頼を生み出すこと、が定められています。
また、セクシャルハラスメントに関する調査及び提言を行う5名以上で構成される苦情処理委員会を設置することとされています。同委員会の委員の過半数は女性で、適任者がいれば女性を委員長とするとしています。セクシャルハラスメントの被害者は、その事実が生じた日から30日以内に同委員会に訴えることができ、委員会は、苦情を受けてから原則として30日以内に、各組織の担当部署に調査報告書を提出しなければなりません。