【ベトナムのセクシュアル・ハラスメントに関する法規制の概要 】

(1) 職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等の措置

 使用者は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントの予防策及び対応策を策定しなければならないとされています(労働法6条2.d)。また、10人以上の従業員を使用する場合、就業規則を書面で作成し、かつ、各地方の労働局に登録しなければならないとされていますが(労働法118条1.、119条1.)、その就業規則の中で、「職場におけるセクシュアル・ハラスメントの予防・対応、職場におけるセクシュアル・ハラスメント行為の処分の手順、手続」について定めなければならないとされています(労働法118条2.d)。そして、使用者は、就業規則に違反してセクシュアル・ハラスメントを行った従業員を解雇することができます(労働法125条2.)。

 一方、セクシュアル・ハラスメントの被害を受けた従業員は、事前に通知することなく雇用契約を一方的に解除することが可能です(労働法35条2.d)。

(2) 職場におけるセクシュアル・ハラスメント行為に対する制裁

 職場でセクシュアル・ハラスメントを行った者については、政府より1500万〜3000万ベトナムドンの罰金が科されます。一方、家事代行業者(メイドサービス)や、家事代行業者を通すことなく直接メイドと契約して家事代行を依託している者がメイドに対してセクシュアル・ハラスメントを行った場合の罰金額は、5000万〜7500万ベトナムドンとなっています。

 なお、これらの制裁が科されるのは、セクシュアル・ハラスメント行為が刑事訴追の対象とはならなかった場合です。刑事訴追の対象となった場合、最高で5年間の懲役刑が科される可能性があります。