【タイの外資奨励政策の概要】

タイでは、投資奨励及び産業振興を目的として、1977年に投資奨励法が制定されています。また、産業振興法に基づき、首相府の下にタイ投資委員会(BOI)が設置されています。タイ投資委員会は、投資奨励法に基づき、奨励産業や恩典等の投資奨励政策を定めるとともに、投資に関する支援を行っています。タイ投資委員会には、日本(東京、大阪)を含む16か所の海外事務所があり、事務局のほか、ワンストップサービスセンター(ビザ・労働許可証)、ワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)、7つの地方事務局があり、様々な投資に関する支援を受けることができます。

また、タイでは、投資奨励政策として、基礎的恩典、メリットによる追加恩典及びその他の政策、特別措置が設けられています。

  1. 基礎的恩典

基礎的恩典には、業種に基づく恩典と技術に基づく恩典があります。

① 業種に基づく恩典

農業・バイオ・医療産業、先進製造業、基礎・裾野産業および創造・デジタル産業・高付加価値サービスに関する事業に対して最長8年間法人税が免除されます。また、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典(外国人技術者・専門家の入国・就労許可、土地の所有権の許可、タイ国外への外貨送金の許可等)があります。

② 技術に基づく恩典

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料技術およびデジタルテクノロジーに関する事業に対して最長10年間法人税が免除されます。また、同様に、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典があります。

2. メリットによる追加恩典

メリットによる追加恩典には、競争力向上のための追加恩典、地方分散のための追加恩典及び工業用地開発のための追加恩典があります。

(1)競争力向上のための追加恩典

以下のとおり法人税が免税されます(投資または支出に対する金額)。

  • 技術及びイノベーションの研究開発 300%
  • 技術・人材開発基金、教育機関、科学技術分野の専門訓練センターに対する支援 100%
  • 科学技術分野のインターンシップの学生に対する技術及びイノベーションのスキルを向上させるためのトレーニング又は職業訓練の実施 200%
  • タイ国内で開発された技術のライセンス料 200%
  • 高度技術訓練 200%
  • タイ国内の原材料及び部品メーカーの開発 200%
  • 製品及びパッケージデザイン 200%

(2)地方分散のための追加恩典

特定の業種につき、1人当たりの国民所得の低い20県に立地する場合に、5年間にわたり法人税を50%減税又は法人税免除期間が3年間追加されます。

(3)工業用地開発のための追加恩典

特定の業種につき、工業団地又は奨励される工業地区に立地する場合に、法人税免除期間が1年追加されます。

3. その他の政策および特別措置

(1)南部国境地域における投資奨励措置および南部国境地域におけるモデル都市企画に基づく投資奨励措置

南部国境県における投資の促進およびモデル都市計画の実現を行い、住民所得を創出することを目的とした制度です。対象業種は、ボディケア製品の製造、建築資材製造事業及び公共施設プロジェクトのための高圧コンクリート製品の製造、日用品用プラスティック製品の製造、パルプあるいは紙による製品の製造、工場・倉庫用建物の開発等です。条件として、最低投資金額(土地代及び運転資金を除く)が50万バーツ以上であること、タイ国内中古機械の使用は、その上限を1000万バーツとし、中古機械の金額の4分の1以上を新品の機械に投資することが必要です。

恩典としては、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代水道代の2倍までを15年又は20年間控除、インフラの設置費または建設費の25%控除等の措置を受けることができます。同措置の適用を受けるためには、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(2)特別経済開発区(SEZ)における投資奨励措置

近隣国との経済的連携の構築とASEAN経済共同体の発足に備えて設けられた、特別経済開発区における投資措置です。

特定の業種につき、投資額に相当した金額を上限として8年間の法人税免除、追加の法人税の5年間50%減税、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代及び水道代の2倍までを10年間控除、インフラの設置費又は建設費の25%控除等の措置を受けることができます。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(3)効率向上措置

生産効率の向上を目的とした、省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための機械の入れ替えや、研究開発やエンジニアリングデザインへの支援及びデジタル技術の導入を促進することを目的とした制度です。本措置の対象となるのは、タイ投資委員会が発表した投資奨励対象業種に該当する事業であり、法人所得税の免除または減税期間が終了し、もしくは法人所得税免除の恩典が付与されていない事業です。

条件として、土地代及び運転資金を除く投資金額が100万バーツ以上であることが必要です。ただし、中小企業(タイ国籍自然人による株主比率は資本金の51%以上であること、奨励申請者の全部の被奨励事業と非奨励事業の収入を合算し、被奨励事業の運営により初めて収入が発生した日から最初の3年間の年間収入が合計5億バーツ未満であること)による事業は土地代及び運転資金を除く投資金額が50万バーツ以上であることが必要です。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。