【マレーシアの外資奨励政策の概要】

(1) 優遇税制

マレーシアでは、投資促進法(Promotional of Investment Act 1986)、所得税法、関税法、物品税法など、様々な法令により税制上の優遇措置が認められます。

  1. パイオニアステータス

パイオニアステータスは、奨励事業または奨励製品にかかる事業(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)から得た所得の全部または一部について、生産開始日から5年間に限り、法定所得の70%が免税となる措置です。同政策の下では、国家的・戦略的に重要なプロジェクトについては、所得税の全額免除が10年間認められる場合があります。パイオニアステータス期間中の未処理損失および未処理控除は、パイオニアステータス期間の終了から7年間を上限に繰り越し可能であり、同一の奨励事業または奨励製品に関する事業の所得から控除することができます。

2. 投資控除(ITA)

投資控除は、奨励事業を営むまたは奨励製品を生産する会社(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)につき、最初に適格資本的支出が発生した日から5年間に発生した適格資本的支出(工場、機械設備などに対する支出)の60%の投資控除が認められます。この控除額を用いて、各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができます。また、未利用の控除額は、翌年以降に繰越すことができます。ただし、この投資控除制度はパイオニアステータスと併用することはできません。

3. 再投資控除(RA)

再投資控除は、36カ月以上事業を営んでいる居住会社であることなどの一定の条件を満たす会社に対し、工場や機械設備などへの適格資本的支出の60%の投資控除を認めています。

この控除額を用いて各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができ、未利用の控除額は翌年以降に繰り越すことができます。パイオニアステータスまたは投資税額控除を利用している会社は、その期間中再投資控除を併用することはできません。

(2) 自動化に関する優遇措置

労働集約型の製造業を対象として自動化を促すための優遇措置が設けられています。

ゴム、プラスティック、木材、家具、繊維の製造業(これらをカテゴリー1とする)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM400万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。また、カテゴリー1以外の製造業(カテゴリー2とされる)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM200万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。

マレーシアで設立され、36カ月以上製造事業を行っている法人が対象となります。自動化の設備は直接製造に使用されるものでなければなりません。

(3) インダストリー4.0(Industry 4WRD)

インダストリー4.0は、マレーシアの中小企業の生産性向上およびスマートマニュファクチュアリング化を目指す方針です。

インダストリー4.0の導入を検討する企業は、生産現場の技術導入に対する準備状況を診断する実現可能性評価(RA:Readiness Assessment)を行います。RAを実施した企業のうちインダストリー4.0のための研究開発や教育訓練、設備の現代化や更新、新技術のライセンス取得や購入、国際標準/認証の取得に係る費用に対して、補助金を申請することができます。政府と企業が補助金を出し合うマッチング補助金となり、負担率は政府:企業=60:40となっています。

(4) 環境技術(グリーン・テクノロジー)に関する優遇措置

マレーシア環境技術公社(MyHIJAU)のリストにおいて承認された環境投資減税(GITA)対象資産を取得する場合に、申請により当該対象資産について100%の投資控除を受けることができます。環境投資減税対象資産は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、ごみ処理、水処理、建物のいずれかの領域で環境に資する資産となります。環境技術プロジェクトを行う会社や環境技術関連のサービスを提供する会社は、申請によりサービスから得る所得の免税などを受けられる可能性があります。